約 5,048,031 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2659.html
にわか雨だったらしい雨も止み、今日から明日に変わる時間帯。 つまりは0時頃。 俺はこの真っ暗な時間にお気に入りの缶コーヒーが売ってなかったコンビニに再度向かった。 別に新しく在庫が入ったかどうかをしつこくチェックしているわけではない。 他に用事があるから向かっているだけだ。 「……お」 コンビニの制服を着た“アイツ”がいるのを見つけた。 殊勝にも店の前のでかいゴミ箱から、袋を出して口を結んでいる。 「おーす」 「ん? ……ああ、おはようだ」 「真夜中でおはようはねーだろ」 「とある業界では、今日初めて会った人の挨拶はおはようなのだよ」 「なにアホ言ってんだ?」 妙な会話から始まったが、この目の前の女性は君島 縁。 コンビニの制服で腰まである長い髪を首元でぞんざいに結んでいる姿。縁は夜中までこのコンビニで働いている。 初めて出会った日からは俺達の関係しか変わってない。 会いたい時は夜中にここに行けば大抵会えるので俺はよく夜中に出かける。 「おい、さっき来たら『スモロ』がなかったぞ。ちゃんと入れとけよな」 「やれやれ、我が儘を言う。私が商品を管理してる訳ではないのだがね……」 ちなみに『スモロ』というのは『スモールロック』の略称で俺が好きな缶コーヒーのメーカーだ。 このコーヒーが売ってなかったから神姫を拾ったガキどもに会っちまったからな。それについても愚痴ついでに話しておくか。 「そういえばよ、縁も武装神姫って知ってるよな」 「もちろん私も世間の流行は知っているのだよ。それに私はキミの例の人助けならぬ、神姫助けの病気は知っているのだし。……それの入院が必要になったのかね?」 「違えって! ……入院は違うが、神姫助けの方だ」 縁にも、俺が神姫を助けようとする発作は知られている。 ネタぐらいの気持ちで話したら、よくいじられることになった。コイツに話したのは後悔している。 しかも、こいつは気にならないのか、俺がこんなアホな奇病になった経緯を聞いてもこない。 (不思議な女なんだが、俺はそんなところも……あ~……) 恥ずかしいので俺は考えたことを瞬時に捨てた。 「実は今日壊れた神姫を…………拾ったんだ」 俺は軽く視線を逸らしてから言った。 「……ふむ。キミもなのか」 横目に見れば縁は何かを呟きながら、目を見開き少し驚いている。 「あ?……どうした」 「いや、なんでもないぞ。……それで、拾ってどうしたのだね?」 その後縁は肩を竦ませてから、俺の話しの先を促した。 「神姫ショップに働く人が、偶然、道を通ってな。そこの人の店に預けた」 「ほう、偶然。ラッキーだったのだな。……で、どうするのだ? その神姫を猛は引き取るのかね?」 「正直、俺自身もわかんねーから、縁に相談しに来た」 俺が武装神姫を持つ? はっきり言って俺みたいな野郎が持つのは気色悪いという気持ちがあったりする。 だから俺自身は持とうとしていないのだ。 それだったら、神姫におせっかい焼くなと言いたいのはわかる。 自分でも理屈でわかってる。だが、あの少女のような風体の武装神姫には個人的に”感謝”してるんだよ俺は。 ……は~あ、どうすっかなー。 と、俺が頭を抱えて悩みこんでいると。 「別にいいのではないか? 猛が武装神姫を持っていても」 「……。野郎が持っていたら、気持ち悪くないか?」 「いや。私はそうは思わん。現にここのコンビニに働いている高校生の少年は最近、家出神姫を拾ったらしくてな。そのまま世話をしているらしいのだよ」 「へぇー、拾うところとか俺と似たようなエピソードだな。拾った神姫がぶっ壊れてなけりゃ、俺が新しい親でも探してやるんだが……」 「そのまま猛が持ち主になればいいのではないか?」 やっぱり、縁もそう言うのか。 俺にはそれに一抹の不安があるのだが。 「……俺が持っていても縁は不信に思わねえのか」 「ふ、猛が言いたいことは百も承知。……実は高校生の少年の話を聞いてみたら、私も武装神姫を買ってみたいと思ってしまったのだよ。だから私も神姫オーナーになろうではないか」 いやいや、そうじゃなくて。 俺が言いたいことは、神姫も人形とはいえ女の格好してるんだから、変なことを起こさないか心配にならねえのかっつうことを言いたいのだが。 「ん、……なんだね? ちなみに忍者型がいるというのでそれを買おうと思っているぞ」 だめだ。 本気で心配してないっぽい。 二年前に初めて会ったときからこいつは変な女だと思っていたが、いまでも変な女だと思ってる。 「はあ、わかった。様子を見に行ってみて、そんときに考える」 俺はこれ以上縁の邪魔しちゃ悪いと思って、帰る準備をする。 「ふむ。私はなんだかんだで、猛はその子の親になると思うぞ」 「……知ったような口だな」 「キミは実際怖い顔をしているが、本当は優しい男だと私は知ってるからな」 縁は真顔でそう言ってきやがる。 俺はそれを聞くと後ろを向いた。 断じて恥ずかしがってる訳じゃない。断じてだ。 「それじゃあな。仕事無理すんなよ」 「ふふ……ありがとうな。おやすみ」 縁はお礼を言った後は口を縛ったゴミ袋を持って、店の裏に行ってしまった。 俺も縁に会って話したかっただけなので、コンビニで何も買わずそのまま家に帰った。 縁と俺は世間一般でいう“彼氏彼女”だ。 ただの眼つきが鋭い大学生、と、夜から深夜帯でコンビニに働いているフリーターらしい彼女。 傍から見たら馴れ初めなんつーモンはわからんと思うぞ。 大恋愛をして付き合うことになったとか、少女漫画みたいなドロドロな展開になってからハッピーエンドになって付き合うことになったとか、そんなことも一切ない。 しかも、こんな会話だけだと恋人関係にしては素っ気なくもあるが、恋人らしいこともあまりしていない。 聞いたことはないが縁は俺よりも年上だとはわかっていた。イチャイチャするような歳でもないだろうし、これが縁の距離なんだろう。 不満はないし、俺が初めて会った時、そして告白してOK出されてからもなぜか変わってない。 ……あれ? 恋人らしいことをした覚えがあまりない。 本当に縁は俺の彼女なのかと思う。 駅とかで見る恋人たちは人前でもイチャイチャしてるのにな。 ……別にいいけどよ。いきなりラブラブしだしたら気持ち悪いし。 なんで年上で変な女を俺が惚れることになったとかは…………昔に色々あったとしか言えない。 ただの若気の至りだ。 くそ恥ずかしいので思い出したくない。 ―――― 「いらっしゃい!……なんでぇ、オメーか」 「……おい。来た客に向かってなんつーこと言ってんだよ」 半日以上大学の眠くなる講義に縛られ、夜のとばりが差す頃。 店に入れば、熊みたいな大きな店長のおっさんが残念そうにしている。 せっかく大学の帰りからここ『Blacksmith』にわざわざ来たっつーのによ。 「閉店間際で男の顔なんか見たくないぜぇ。できれば神姫愛好家で可愛がってる二十代後半のお姉さんが来てほしいっつうの? 男なら、そういう心情がわかんだろ」 「いいや、俺はわからん。……独り身かよ。何歳なんだ?」 「俺は……29だ」 「ウソだろ」 「ホントだ! 自分でもわかってんだから言うんじゃねぇ!!」 どうやらよく言われているらしい。 俺から見ても、明らかに顔はもう30代に見える。 この店長のおっさんは年齢よりも老けて見えているのが悩みみたいだ。 その上身体がくそでかいし、顔に傷があるしで、そんな女性客が来たとしても怯えて逃げちまうだろうが。 おっさんの姪、霧静みたいな学生が店内で働いていたら大丈夫だが。 店長のおっさんだけが店にいても、その望みは絶対叶わないであろう。 つーか、29歳で高校生ぐらいの姪がいるということは、このおっさんはおそらく弟なのだろうな。だったらおっさんの兄が20歳からの前後半で霧静は生まれたことになるのかもしれん。 兄は早く子どもが生まれてて、弟は29歳で姪とその神姫に助けられながらショップをやっている。 哀れなおっさん。 「ふーん、あっそう。そんで? 昨日の壊れた神姫はどうなったんだよ」 「あ! 話し逸らしやがったなぁ!!…………ったく」 店長のおっさんは、これ以上話してもしょうがないと思ったのか。 ため息を吐いてから、店の入り口に行って営業中の札を準備中にした。 「もう閉店なのか。まだ営業中じゃねえのか?」 「別にいいだろ。もう来ないだろうからなぁ。漣同だったか? ちょっとこっち来い」 営業者がそれでいいのかと思うが、確かに人は来ないっぽいし、閉めても来ないのだろう。主に店長の図体のせいで。 店長のおっさんについて行って、カウンター奥に俺も行く。 「今日は来ねぇと思ってたけどよ、オメーさん、意外に神姫が好きなんじゃねぇか?」 「……うっせえ」 前を歩きながら、後ろを振り向いてニカー、とかの擬音が似合いそうな笑顔。 おっさんの笑顔なんか見ても嬉しくねーよ。 俺が通された所は応接室と言えばいいのか、少し広い部屋で長方形のテーブルに向かい合わせに長広なソファーがある。 横を見れば作業場と名が書かれた扉があった。 「持ってくるから、まってろい」 店長のおっさんはその作業場らしい部屋に入った後すぐに真新しくなった神姫を持って来た。 その神姫をテーブルに置いてから店長のおっさんはソファーに座る。 とりあえず俺も反対に座った。 「こいつはまだ完全に治ってねぇんだわ」 「ああ、あれだろ? 目の部品がねえってやつ」 俺は神姫を手に取ってみた。 綺麗になったが左目に眼帯をしている。 少しどけてみると眼帯の奥は穴が開いていて、電子機器のような部品がゴチャゴチャしている。 機械人形の頭の中は理解できないパーツでいっぱいなんだろう。 「あ、おい。頭ん中に埃とか入ったらどうすんだ。ほら、寄こせ」 俺は素直に渡した。 せっかく治したのに、壊されたらたまらないのだろう。俺はそんな乱暴に扱うやからではないのだが、むしろ、そういう奴が大嫌いっていうのか。 ……俺もはたから見たらそう見えそうだけどな。 とりあえず、すこし反省。 「この神姫、脳内メモリとかも全滅だったんだけどよ。そんで初期化もしてっから、目以外は新品同様にしといたぜ。……んじゃ、一回、起動させてみようか」 そう言って店長のおっさんは神姫の胸部、CSCの部分を弄ったあと、その神姫を立たせた。 座ってる俺と向かい合わせになるように。 なんで? と思う間に起動音がしてから、片目と口が同時に開き機械音声のような声が聞こえてきた。 『タイプ・戦車型MMS神姫ムルメルティア。まずは個体識別の為のネーム、マスターのネームをお教えください』 俺は店長のおっさんを見る。 さっさとしろというジェスチャーをしていた。 もうどうにもならんらしい。 「俺の名前は漣同 猛。お前の名前は……まだ決まってねえ!」 はっきりそう言ったら、店長のおっさんがずっこけた。 「おい!?」 「しかたねーだろ。前準備も無く、いきなりそんなこといわれても思いつかねーだろうが!」 ―――― (自分はどうすればいいんだろうか) 起動プログラムから自我を覚ましてみれば、目の前には自分の上官となるマスター、漣同 猛という人がいる。 どうやら、自分の名前はまだ登録できてないらしい。 買ってきた武装神姫になかなか名前を決められない人がいるので、後で登録できる設定もある。神姫センターで名前を変えることもできるので、別に今でなくてもいいのだけど。 でも、この状況はどうだろうか。 目の前のマスター。――「タケル上官」と言うことにしよう。 眼鏡をしていているが賢そうというより、どちらかというと眼つきが鋭そうな上官ではある。格好が良い上官であるのが嬉しくはあるが。 そのタケル上官が自分の真後ろにいる随分と身体が大きな人物と言い合いをしている。 ……うーん、話しかけずらい。 それになにか自分の目に違和感がある。 ぽっかりと空洞な感じで左目が見えていない……触ってみると眼帯で隠されているみたいだ。 戦車型はアクセサリーで眼帯があるが、本当に隠しているわけではないし、あれはちゃんと見えている。だが、自分は本当の眼帯が装備されている。 自分が不良品なのか、リサイクルされた神姫なのかはわからない。 自分が起動したのもこれが初めてではない気もする。 だけど、――そんなことはよくて。 目の前の上官に、こんな片目のない神姫でいいのかどうか聞かなくては……。 「あの!」 「ん? ああ、そうか。本格的に起動しちまったのか……まだ名前決まってねえんだよ」 「さっさと、決めちまえって。『ああああ』とかテキトー名にしても店のPCで直接変えてやっから」 「うるせえ! 俺はこういうのは真剣に考えちまう派なんだよ。旧世代のロープレみたいに考えんじゃねえ!」 自分の入り込める隙がない。 きっとこんな喚き散らした状況で起動されたのは自分が初めてではないのだろうか。だけど、このようなところで自分は負けない。 「タケル上官!!」 「え、“上官”? 上官ってなんだよ!?」 「ムルメルティア型はマスターの呼び名は名前の後に『上官』がデフォルトなんだと。商品のパッケージにも書いてあんだぞ」 「それを早く言えよ! 軽くビビっただろうが。……はぁ、そんで。ムルメルティア型、俺に何か質問か?」 どうやらタケル上官は自分の名前を型名で呼ぶ事にしたようだ。 保留にされてしまったらしい。 内心で少しガッカリしてしまうが、後で良い名前でもつけてくれるのだろうか? 不安だ。 「自分の左目がないみたいだけど、不具合でもあったのかな?」 「あ~、そうだったな。オメーは道で捨てられてて壊れてたんだわ。それを俺が拾った。わかるか?」 「……うん」 自分に付けられている眼帯を再度触る。 本当に自分は完全な新品ではないらしい。 当り前だ。片目がないのだから。 記憶データをリセットされてしまっているみたいなので、自分が仕えていた前の上官はまったくわからない。 何かがあって捨てられてしまったんだろう。 「ほら、落ち込んでんじゃねえよ。目がない部分も修理する予定なんだから」 「だけど……自分は」 「このおっさんがちゃんと治してくれっから心配すんなよ」 タケル上官が指を差したので、自分は後ろに座っていた人物を見た。 自分が思うに……本当に大きい人だなと。 この人はメカニックなのだろうか。 「おっさん言うな! ……そうそう。そういえばよ、部品の事で漣同に商談があるんだが」 「……なんだよ。なかったんじゃねのか?」 「ここに、一個?……じゃねえな。……ここに一粒のパーツがあるんだが」 メカニックの人が後ろのポケットから、プラスチックケースの薄い箱をテーブルに置く。 自分が中を覗き見てみると、布が敷かれていて、真ん中には自分たち神姫に使われている目のような物。 とても綺麗な色だ。 「こいつは神姫の目だ」 「あるんじゃねえか。だったら、さっさとこいつにつけてくれよ」 ぶっきらぼうに今度は自分に指を差している。多少なりとも想ってはいてくれるらしい。 心配もしてくれるし、優しくもある上官だ。 少なくとも変な上官ではないらしい。 それはよかったと思える。 「慌てなさんな。片目しかない分、こいつはとても貴重な物だ。貴重なだけに保管してたのをすっかり忘れててな。……条件次第ではこのムルメルティア型にくれてやってもいいぜ」 「……これが」 この綺麗な瞳が自分の顔の一部になるのか。 自分にしては心が惹かれてしまう。 だけど、タケル上官はどう思ってるのだろうか。 無理難題を出されてしまったりとか、起動仕立てでそんな迷惑は掛けられないのだけど。 「金とかじゃねえのかよ?」 「こいつは一介の大学生とかが払える額じゃねえからな。もちろん借金して払えとかそんな鬼じゃねえ。 ……条件はそうさな……漣同、オメーさんここで働く気はないか?」 「…………はぁ?」 タケル上官は数秒考えてから、すっとんきょうな声をあげた。 自分が起動してから、なんだか凄い展開になってきているみたいだ。 自分自身も一体これからどうなるのか、全然わからない。 前へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2630.html
――あのゲームセンターの近く、ファミレスがあるのだけど、そこで話せない?―― 二時間後。 淳平と別れた後、夜に変わった時刻にメールをもらい、一旦家に帰る。 シオンには「休んだ人が出ちゃったから、バイトに行くよ」と嘘をついた。 正直に前のオーナーと会ってくるなんて言えるわけもなく。 「代わりだからすぐ終わるよ。だからちょっと待っててね」と言った。 寂しそうにしていたと思ったら、すぐに嬉しそうに返事をしてくれた。……かわいい。 待っていてくれる人、ではなく神姫だけど、そんなのが家にいてくれるのは嬉しいと思えた。 私服に着替えて、返信をしてすぐに向かうことを伝える。 あのゲームセンターから、少し通りを歩いたところ。信号があって大きな十字路になっている角にファミリーレストランがある。 ゲームセンター近くに来てみたけど、ここで合ってるのかな。 心配になったので、とりあえずそこで合っているかどうかのメールをしてみる。 合ってなかったら恥ずかしいし、聞く恥なら耐えられる。 ――そのお店。そこの禁煙席、奥の方にいるから―― すぐに返信を返してくれる律義さに感心を覚えつつ、ファミリーレストランに向かう。 会う事はできたけど僕はどうすればいいのか、まだ答えは出てきてない。 シオンが元の場所に戻れるのを望んでいるのか。……それは嫌なんだけど、元々は宮本さんの物だし、武装神姫は世間から見れば、結構高いもの。 高校生の僕とかはアルバイト代とかを必死に貯めれば買えないものではないけど、武装とかもお金がかかるしな。淳平とかは親戚の伝手で、中学の頃から内緒でアルバイトしてミスズを買った、て言ってたっけ。 僕はただ、シオンの顔を曇らしたくないだけで。転がり込んできた神姫だけど、シオンが望むのなら元の居場所に戻ったって……。 考え込んでいたら、足はもう目的地のファミリーレストラン前に着いていた。 思い耽ってた事を横に置き、扉を潜る。 「いらっしゃいませ、何名さまですか?」 とお決まりのフレーズを店員さんが出しやってきた。待ち合わせで来ている人が居ると説明すると「ごゆっくりどうぞ」と会釈される。 いつも、家で食べてるからファミリーレストランに入るのも久しぶりだな。一人暮らしだったらこういうところを利用するのも悪くないけど、お金がかかるしなあ。ちゃんと、生計は考えないといけないし。 禁煙席の奥の方。宮本さんはいた。 もうテーブルには積み上がった二皿とアイスティーが載せられていて、今はグラタンを食べている。 女性なのに、よくこんなに入るな。 「さっきぶりね。こんばんわ」 「こんばんわ」 僕は挨拶をすると、向かいの席に座る。 宮本さんの方を見れば横に何かの紙袋を置いていて、先ほどと同じ服装でいる。ラフな服装を好む人みたいだな。 「長倉君だっけ。キミも何か頼んでいいよ、奢ってあげるから。ただし常識の範囲内でね」 「そんなことはしませんよ。今日一緒にいた僕の友達ならやりかねないですけど」 「彼ね、確かにそんなことをしそう。でも、あの天使型の神姫に止められるでしょう?」 「そうですね。学校でもそんな感じですし」 「ふふ、初めて会ったけど、何となく想像つくわ」 なんでか知らないけど、淳平の事をだしにして会話をしている。いい人そうであるし、神姫のバトルに固執する人にも見えない。あのイスカっていう神姫だって……あれ? 「宮本さんの神姫はいないんですか?」 「ああ、言ったでしょ。スリープモードになっているって。家に置いてきたわ。それに、この話しを聞かせたくないのよ」 一呼吸置いて、グラタンを運んでいた手を止める。 「それじゃ、話してくれないかしら。長倉君がどうしてあの子を拾ったのかを」 居住まいを正して、僕はあの日に拾ったことから、いままでのことを話した。 ―――― 「……。そう。あの子にはシオンって名前をつけてくれたのね」 「はい」 話し終えたら、宮本さんは名前に関心がいっている様子で、いつの間にか食べ終えたグラタンの皿の底をスプーンでつついている。 「どうして、神姫の登録を消したんですか?」 「こういう時って、こうするしかないのよ。探し回ってはいたんだけど、どうしても見つからなくて、家にも戻ってこなくて。……長倉君は知ってる? 神姫を悪用して、犯罪を犯す人もいてね。それが自分のじゃなくて、他のオーナーのとかだったらどうなるか、とか」 「! ……そうか」 拾う人が善人とは限らない。携帯電話とかと同じだ。携帯会社に連絡して紛失したら一時的に解約することと同じ。 神姫が知らない人に自分の名前、オーナーの名前を言わなくても、機械を通じている人なら神姫の記録を直接見ることが出来る人もいる。当然神姫をプログラムで操る人もいる。 それが他人の神姫だったら犯罪のリスクが低くなるということか。疑われるのは持ち主だもんな。そこら辺りが勉強不足だった。 「キミって見かけの割に、結構頭の回転早いのね。詳しく説明しなくてもわかってるみたい。まあ、つまりそういう事。心が痛むけどね」 「だけど、それは考えれば少ない事例です。神姫が盗まれたりした時とか、神姫を捨てる人だって多分そういうのはわかってます。でも、勝手に家出する神姫なんて極力ないし、なにがあったんですか」 「あら、あの子から聞いてないの?」 「そ、それは、聞きましたよ。バトルが出来ない、戦う事が出来ない。武装神姫としては欠陥だって悲しそうに言ってました。でも、武装神姫だからって、色々他にもあるはずです。生活のパートナーだったり、友達とかでも」 「……甘いわね」 「っ――」 目を見て射すくめられた。先の言葉を言おうとしたのに、止められた感がある。細くなっている水色の目つき。感情は冷え切っているようにも見えた。 「確かに、そういう人も周りにはいる。でもね、わたしの武装神姫はバトル本命なのよ。バトルができないからって、いきなり『生活のパートナーにする』とか私は切り替えられない。……それにね、ええっと、今はシオンだっけ? シオンがバトルできないことに対して、一番怒っているのは『イスカ』なのよ。私が何も言えない程にね」 「あのストラーフですか」 「そうよ。あの子が妹が欲しいなんて言うから買っちゃたのよ。買うときは、バトルに熱くなれるよう熱血なアーティル型がいいからってイスカが決めたんだけどね。コアをセットしてみたら、あら不思議。バトルができない心優しいアーティル型ができたってわけ。組み合わせが悪かったのかもね」 宮本さんは饒舌に喋り続けている。今まで行き場のない怒りや不満に感じていたことを全部吐き出すように。一旦止めて、テーブルにあったアイスティーを一口飲むとまた喋り出した。 「バトルを始める前までは、そりゃすごく可愛がっていたのよ。イスカは無口だけど、バトル以外で楽しそうにしてるのを初めて見たわ。……私にとったらドン引きよ。顔をデレデレしちゃってるんだから。だけど私はシオンがものすごく丁寧な物腰なのにちょっと不安だったのよ。こんな子が激しいバトルをできるのかって」 真っ赤な目で無表情な顔を綻ばせているあの悪魔型神姫があまり想像できないな。バトルしてる感じでは普段からあまり喋らなそうに感じたけど。 「そしたら、案の定バトルをやらせてみても、何も出来ずに終わる。どんなバトルでも同じ。イスカとやらせてもへっぴり腰な姿。イスカはそれはもう絶望してたわ。期待してたのに、裏切られた気分だったみたいね。元の無表情に戻ってたわ。私もそんなこと初めてだから、何を言えばいいかわからなかったのよ。 神姫センターで修理にも出してみたけど、ノーエラーで異常はないってね。何もでないっておかしいけど本当なのよ。それで私は何も出来ず、イスカは会話もせず。……それで、あの子は出て行っちゃったってわけ」 「でも、だったら、どうしてここのゲームセンターでバトルなんかして、探すような真似をしてたんですか? 宮本さんの地元はここじゃないみたいですし」 最近見かけるようになったって話しを聞いたときに、不思議だった。シオンを拾った日から何日も経ってるし、なんで今ごろとも思った。 「私ね、神姫バトルは好きなんだけど、これでも医学生なのよ」 うん? なんか話が飛んだな。 「私はクォーターでね、祖父がフランス人。その祖父が国で病院を経営しているの。最近になってそこで研修生として働かないかって話が祖父から来ててね」 「じゃあ、日本を離れるんですか?」 「今すぐって訳じゃないけどね。もちろん、神姫も連れて行くわ。あっちにも武装神姫は流行っているみたいだし。日本を出るとなると、気になってきてね。あの子はどこに行っちゃったのかって。まさか二駅先にまで彷徨っていたなんて。根性があるわ」 ふうっと一息ついて、アイスティーを飲み干す宮本さん。言いたい愚痴を全部吐き出した感じがする。 「後はゲーセンで色々聞き込みしてたら、バトルする流れになっちゃって。キミたちが出てきたということ。バトルしてたのは無駄じゃなかったわ」 「見つけて、その後はどうしようと?」 「うーん、いい人に拾ってもらってたらそのまま。危ないことや酷いことをさせられてたら、意地でも捕まえて悲しいけどリセットさせるわ。でも、キミみたいな子に拾われてたのは不幸中の幸いね。……そこはお礼を言うわ。ありがとうね」 「いえ、大したことはしてません。とてもいい子だし、僕の神姫としては勿体ないくらいです」 一緒にいる僕もシオンには色々助けられているし。 「そうね。いい子すぎるわ」 宮本さんは自傷気味にそう言うと、グラタンの皿を持ち、テーブルの皿は三皿積み上がった 「……CSCをリセットしようと思わなかったんですか? バトルがうまくできないとわかって」 言いたくはなかったけど、これは聞いておかないといけないことだ。 「CSCをリセットすることはね、神姫を殺すことと同義なのよ。医者を目指す私としては人形といえどそんなことをする気は起きないわ。だから余計にバトル恐怖症をなんとかしようと躍起にはなったんだけど……このざま、カウンセリングなんて知識もまだない。ましてや相手は武装神姫。神姫に逃げられるダメマスターよ」 宮本さんはため息をもらす。 どうにかして、バトルできるようにしてたみたいだけど失敗に終わり続け、シオンは宮本さんの元を離れてしまったわけか。バトルができないからオーナーに捨てられる、傍にいる価値はないと思ってるのかな。神姫も悩むし苦しむんだ。 「宮本さんの神姫は……イスカは、シオンの事を怒っているんですよね」 「ええ、今でもその話したら、不機嫌になるわね。『……あいつの話はしないで』なんて言って、もっと仏頂面になるわ。最悪、いなくなって、なにも思ってないのかもしれないわね」 イスカをどうにかできないと、シオンのわだかまりはどうにもできそうにないな。イスカにシオンを認めさせるには、やっぱりバトルをして勝つことだろうか。 いがみ合った敵でも戦った後に友情が芽生えるとか王道だし。……思考が短絡的だな、僕。 戦う前提だと、バトル恐怖症の壁があるのを忘れたのか。 「私からも一つ聞いていいかしら?」 「あ、ええ。なんでしょうか」 「見た感じ長倉君は武装神姫は初めて持つのよね。拾った神姫でなんでそこまで一生懸命になれるのかしら?」 なんで、てそれは……なんでだろうか。家庭に人がいない状況を僕は寂しいと感じた。それでも毎日シオンが出迎えてくれるのが嬉しい。つまりそれはもうシオンが僕の家族になっているからだと僕は思ってるから。 「シオンは僕の家族です。家族の為に行動するのに理由はいりません」 キッパリと僕は宮本さんに言いきった。 「ク……クク……。ハハハハ!」 だけどなぜか宮本さんにすごい笑われた。腹を抱え口を開けて大笑いだった。 「な! どうして、笑うんですか!?」 「いえね……クク……。キミが真剣にそんなこと言うから。ふふ」 ものすごく心外だ。真面目に答えたのに、笑われるとどう反応していいのかわからないぞ。 「ふぅー。久しぶりにこんなに笑ったわ。でも、いいと思うわよ。家族」 「……そうなんですかね」 笑われた人に言われてもな。僕はなんだか呆れてしまう。 「そうよ。私は真正面から人形を家族なんて言えないもの。それは長倉君が持つ優しさよ。……シオンを頼むわ、それで、これ」 「これって?」 宮本さんは横に置いてあった紙袋を渡してきた。ずいぶんと大きな紙袋だ。中を確認してみると、武装神姫とロゴが入ったケースだ。隅の方にはクレイドルもあった。 「あの子の装備一式よ。バトルのために揃えたけど、無駄になってね。イスカにも似合わないし、あげるわ」 「そんな、こんなの貰えません。バトルだって……」 「でも、必要になるわよ。武装神姫を持っていればおのずとね」 意味深な事をそう告げる。なにか見透かされているようなそんな感じ。 「……一応、預かっておきます」 「そうしておきなさい」 そう言うと、宮本さんはコップの、解けた氷の水と少し残ったアイスティーとが混ざった飲み物を口に入れる。それがカランと音をたてる。 その後、僕は結局何も頼まずお礼をして、家に帰った。 手には紙袋を持って。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/577.html
神姫ガーダー テスタロッサ エピソード① 『神姫ガーダー誕生!』 ―全ては一本の電話が発端だった。その電話を受け取った時から、私の運命は動き始めたのだ。 ~2036年12月31日 PM 22:30~ そこは荒れ果てた街だった。 住む者がいなくなって、どれだけ経ったのかわからない。ただ周囲の建造物の崩れ具合から見て、それが少なくとも数十年単位であろうことは想像がついた。かって雄雄しく聳えていた超高層ビルは尽くが傾ぎ、壁面が剥落していた。 今、その荒れた街中に動く影があった。 ほっそりとした、人影だった。張り出した腰や長めの黒髪から、それはおそらく女性だろうと推定された。バストは分厚い装甲の鎧に覆い隠されてうかがい知る事はできない。 全体にぴったりした赤いスーツを身にまとい、胸甲も紅玉のごとき紅色。まるでその女性は全身に血潮を浴びたように真紅でコーディネイトされていた。 女性は慎重に周囲を見回しながら、廃墟の中を歩いていた。両側に耳のように張り出したセンサー付きのヘッドギアが左右に動く。両腕にそれぞれ巨大な“骨”を思わせる大砲を装備した彼女は、いつでもそれを放てるように構えながら移動していた。 と、ヘッドギアが一点を向いた。犬の耳型センサーが何事か感知したのか、慌しく警告音が鳴り響いた。 同時に紅色の彼女はその場から跳躍した。 直前まで彼女が居た場所に稲妻のような光輝が突き刺さる。凄まじい高熱に一瞬で路面が蒸発し、爆発的に吹き飛んでいった。 その衝撃波の中を紅の少女は跳んでいた。垂直に切り立った壁を蹴って、ジグザグに摩天楼の合間を上昇してゆく。先ほどの稲妻が少女の後を追うが、ランダムな動きを捉える事ができず、ひたすら破壊の痕をビル群に刻んでいった。 やがてとあるビルの最上階に彼女は辿り着いた。周囲のビル群からいっとう抜きん出たその位置からグルリと周囲に眼を配り、稲妻の方向を見定めようとした。 ―居た。 はるか彼方、ビル群とビル群の合間。遮る物の無い空中を一個の影が飛翔していた。白茶けた空を背景に、ブルーの翼がひときわ眼にしみる。超々高速移動する翼はたちまち紅の少女の元に追いつき、猛禽のように襲い掛かった。 同じく蒼く染め抜かれた脚部ブースターの根元から白煙が上がった。見ればコバンザメ型のミサイルが二基、こちらに向かって発射された。ミサイルは風を斬る音を響かせながら紅鎧の少女へと迫った。 「!」 少女は両腕に装備した“骨”型の大砲のうち、左腕のモノを持ち上げ引き金を引いた。縦型二連装の砲口から放たれた砲弾は散弾となり、怒涛の如くミサイルを迎え撃った。金属の雨に叩かれ、ミサイルに無数の風穴が開く。次の瞬間、ミサイルは紅蓮の炎を巻き上げて誘爆していった。 炎の柱を狭間に介し、紅鎧の少女と蒼翼の敵対者はにらみ合った。 イオンジェットの尾を引きながら、蒼き戦士は大きく翼を旋回させた。機動性はこちらが有利である。音速に迫る攻撃に対し、壁を蹴ることでしか加速できない赤鎧の少女は明らかに不利であった。 蒼翼の少女は大胆にも自分から攻撃することに決めたようだった。 再び蒼翼の少女から白煙が上がった。今度は翼下に吊るされた大型の空対地ミサイルである。先ほどと同じ軌道を描いてミサイルは近接すると、空中で弾けて無数の子弾頭をばら撒いた。 それを見て再び紅鎧の少女は左腕の砲を撃った。単発ではなく、連続して円弧を描くように銃身を振る。鋼色の嵐が横殴りに渦巻き、ミサイルの子弾頭とぶつかり合った。きらめく光芒が二人の間に生まれ、次の瞬間爆発四散していった。 噴煙の中、少女たちは高速で移動した。紅鎧の少女は傾いたビルの壁面をスロープ代わりにして。蒼翼の少女は主翼を下方へ傾けてその後を追い駆ける。 地上に降りたのは、紅鎧の少女のほうが先だった。こちらはほぼ最短距離を墜落同然に駆けてゆくだけのことである。一方、蒼翼の方は周囲の瓦礫に翼が引っかからないよう回避行動を取らねばならなかった。 加えて廃墟の街は下方へ行くほど瓦礫に満ちている。相手の機動性を損なう事、それが紅鎧の少女の狙いだった。 瓦礫をかすめるように飛んで行く、蒼翼の少女へ向けて巨弾が放たれる。続けざまに放たれた弾着の衝撃波は空中の敵を揺さぶった。 蒼翼の少女は唇を噛み締めるとブースターを噴かして一転、垂直上昇し始めた。それを追おうと放たれた弾丸は、ことごとく後方で炸裂しけして当たる事はなかった。 “レイ!V-MAXだ!” そのとき、何者かの声がこだました。まだ若い、十代のものと思われる声はいささか焦りを感じさせた。 「レディ、エイジ。V-MAX、発動!」 蒼翼の少女は突然のその声に答える形で叫んだ。 次の瞬間、蒼翼の少女の全身を包み込む形で蒼い球体が出現した。 透き通った、水晶を思わせる球形のエネルギーフィールドだ。ソレに包み込まれた少女の身体が猛然と加速を開始した。否、それは単なる加速ではない。ジグザクに軌道を変える、あたかも重力のくびきを脱したかのような運動は明らかにこれまでとは一線を脱していた。 蒼翼―否、《蒼き流星》と化した少女はその軌道を変え一転、紅鎧の少女の居るポイントを目指す。途中紅鎧の少女から放たれた骨型の大型砲から放たれた弾丸が当たるが、目立ってダメージを受けた様子も無い。まるで相手の攻撃を呑む込むように《蒼き流星》はさらに加速していった。 「マスター、許可をお願いします」 やや焦りの色を浮かべながら、紅鎧の少女は何処かへ声を送った。するとソレにひかれる形で新たな声が響いた。 “わかったよ。ジリオラ。ジリオン・シュートだ!” 「ありがとうございます…マスター!ジリオン・シュートゥッ!」 次の瞬間、『ジリオラ』と呼ばれた紅鎧の少女は加速を開始した。さらに少女の全身を紅のエネルギーフィールドが包み込む。 蒼翼の少女とは対照的なその姿は、《紅い光弾》と呼ぶにふさわしい。 《紅い光弾》と化した少女は、《蒼き流星》を迎え撃つ形で急速上昇を開始した。 二つの光球は、傾いだ高層ビル群の半ばほどの高度で激突した。 蒼と紅、二つの球体の表面に紫の雷光が生まれ、周囲に飛び散ってゆく。雷光がぶち当たったビルの表面にひび割れが走り、大音響を上げて崩れ去っていった。 「!」「!!」 ぶつかり合いせめぎ合う二つの光球の内、歯を食いしばり睨み合う二人の少女の影が薄く見え隠れする。光球は互いに潰し合おうとするがごとく揺れ動き、さらにはグルグルと回転し始めた。 ―その姿は、あたかも互いの尾に噛み付いて喰らい合おうとする二匹の蛇を彷彿とさせた。雷光は次第に広がり、光の津波と化して周囲を破壊の渦へと巻き込んでゆく。まるで年老いた星が爆発的に膨張して、周囲を熱と電磁波の津波に巻き込むように全てが飲み込まれていった。もはやかってあった街の趣はなく、ただただ光の渦が爆発四散する光景が目の前に展開していた。 ―やがてその現象は終局を迎える。 風が吹いた。 林立していたビル群は見る影も無い。ただただ何も無い荒野が広がっている。その荒野のど真ん中に巨大なすり鉢状の地形があった。 超々高エネルギーフィールドの渦によって大地が溶解されてできた、クレーターの中心部に光球が残るのみである。 荒れ狂っていた光の渦はほぼ治まり、小さくなったソレは二つに別れた。さらに光球は元の姿を取り戻してゆく。 元の二体へ戻った人影の内、一体がひざを着いた。 力なく倒れたのは、蒼き翼の少女の方だった。あちこちにダメージを追い、とりわけ染め抜かれた蒼の翼は半ばから折れてしまっている。 そうしてもう一方、紅の鎧の少女も両腕の大砲を失い、胸甲部を大きく抉られている。ただし致命傷は受けていないようで、割れた装甲の隙間から覗く双球は荒く上下していた。かろうじて立っていた紅鎧の少女は、対戦者がその機能を喪失したのを確認するとゆっくりと振り向いた。 次の瞬間、何処からとも無く再び声が響く。 “Winner 《紅い光弾》ジリオラ選手 オーナーは『灰原貴志』氏” 最初の声とも、二番目の声とも異なる一種無機的な声が聞こえると同時に、紅鎧の少女は相好を崩した。満面の笑みと共に上空を仰ぎ見る。 「マスター!ワタシ、勝ちました!」 “よくやったね。ジリオラ。何処も悪くはないかい?” 「はい!だいじょう、ぶ…です」 優しさを感じさせる声に応える少女。だがうなづいたと同時に姿勢を崩したのは、やはり内部ダメージが相当あるせいだろう。 “さあ、帰ろうか。ソレに今から発表しなくちゃならないこともあるしね” 何処からかの中継だろうか?背後にどよめきとも知れぬ声無き声が流れる中、《マスター》と呼ばれた人物は少女に帰還を促した。するとソレが合図になったかのように、周囲の光景に異変が生じた。 荒れ果てた荒野。住む者が誰一人おらず、ただ砂礫の広がる大地の光景が急速に色あせ始めたのだ。単色と化した光景は、さらに質感を伴わない扁平な画像のようになり、続けて細かな光の粒子となって散っていった。 少女が立っているのは、液晶パネルのような構造物が数百、数千枚敷き詰められた床の上だった。上空を見上げると、同様の半透明のパネルに覆われた壁とソレに続く天井が広がっていた。 一辺数百メートルに及ぶ超巨大立方体。二人の少女はその内部で闘っていたのだ。 否、それにしては奇妙だった。 眼を凝らせば、半透明の壁面越しに立方体の外部の光景を見ることができた。立方体の外側はすり鉢状となり、さながら巨大なアリーナとなっていた。無論アリーナの階段に段々となった席には観客と思しき人々が大勢座っている。 だが、彼ら観客のスケールは明らかにおかしかった。少女のスケールを正とすると、観客の身長は二十メートル近くとなる。まさに巨大ロボットの世界だ。 立方体の両端部にも巨大な人影が座っていた。何らかの機器を操っていた、その内一方が立ち上がった。少女はそちらの方へ足を引きずりながら歩いてゆく。 と、少女の身体がよろけた。すねの部分が火花を上げて、小さな部品が辺りに飛び散る。 そう、少女の身体は機械で創られていたのだ。微小なチップとポリマーゲル、人工皮膚とセラミックの骨格で形成された、ソレは一種アンドロイドと呼ばれる存在だった。 …そうであれば、スケールの違いは納得が行く。 おそらく、少女は人間の十何分の一かの自律可動フィギュアなのだ。アリーナは実際は四方数メートルの立方体で、外側の人間は普通の観客なのだろう。 そして、今立方体の外部へと出た少女を抱え上げた人物は…。 「マスター」 《マスター》と呼ばれた人物は、少女人形を優しい手つきで撫でほお擦りをした。対する少女人形は少女は心地よさげに眼を細めた。 こうして伴にある光景を見れば、先ほどの推測は全て真実であると分かった。 少女人形。否、身長十五センチ弱、スケール的には十二分の一の自立可動型アンドロイド。 《彼女》は『武装神姫』と呼ばれる存在だった。 ~2036年12月31日 PM 22:50~ 目の前に浮かぶ映像を見つめ、私は小さく吐息をついた。 壁面いっぱいに投影された、その画像はたった今行われた『S-1グランプリ ダイナマイト神姫バトル』の最終決戦の様子だった。 一年間に及ぶファーストランカー同士の戦いに結着をつける、まさに天王山とも呼べる試合の勝利者は《犬型MMS ハウリンタイプ ジリオラ》だった。ジリオラのオーナーは《灰原貴志(はいばらたかし)》。都内工科系大学の博士号を持つ学生だ。 そして、私の十五才離れた弟でもある。 主にナノマシンの動力機関である、ジェネレーター関連の研究の集大成として創られた《犬型MMS ハウリンタイプ ジリオラ》はその身の内から引き出される莫大なエネルギーを球形の位相空間として展開し、自らを『弾丸』として攻撃する手段を得意とする。これに対抗できるのは同じく位相空間を展開できた《天使型MMS アーンヴィルタイプ レイ》のみだった。オーナーは《飛鳥エイジ》。防衛大学空軍パイロット養成科の学生である。 《武装神姫バトル》。 身長十五センチ弱。コアユニットたる頭部と三つのCSCの組み合わせにより自我を持つ、少女を模したマイクロロボットを《神姫》と呼ぶ。 元々民生用に創られたソレに武装を施し、競い戦わせるようになって既に五年余りが経過する。“武装神姫バトル管理協会”により一元管理されるこの競技は今や全国、否国際的に大人気のアミューズメントへと成長を遂げていた。 少女の姿をした二体のアンドロイドを闘わせる『ゲーム』について、フェミニズムだのジェンダーだのの方面から多少の“物言い”が無いではなかったが、二十一世紀初頭から興勢を極めた“オタク”産業の集大成として《武装神姫バトル》は受け入れられた。 そして、《S-1》と呼ばれる武装神姫バトルのとあるリーグ戦の2036年度最高位に我が弟が輝いたわけである。 かく言う私の名前は《灰原聖志(はいばらまさし)》。既に三十代後半に達しようという、市井の人間である。 まだ《S-1》の中継は続いていた。この後行われるのは、どうやら勝者に対するインタヴューらしい。私は傍らに置かれた梅酒の杯を飲み干し、再び投影画像に見入った。 …この後起こるだろうことを私は知っていた。かねてより弟が悩み、考え抜いたことを実行しようと言うのだ。あらかじめ悩みを相談されていた私は承知していたし、ソレが今日行われることも事前に連絡されていた。 画面では、きらびやかな衣装をまとったアナウンサーが弟にマイクを向けていた。ひとしきり賞賛の言葉とねぎらいが続き、弟に対しコメントが求められる。 “チャンピオンは日本の、ううん世界の頂点に立たれたわけですが、これからの抱負をお願いします!今後は下位ランカーに追われる立場となるわけですが…” アナウンサーに対して、我が弟は不思議な表情を浮かべた。安堵のソレとも、諦念からのソレともとれる笑みを浮かべながら彼は…。 “僕は、今期限りで《武装神姫バトル》を引退します” 静かに、それだけを告げた。 ~2037年1月1日 AM 5:30~ まだ仏暁の闇の中、私は外へと出た。 自宅近くの土手を降り、そのまま川面を臨むほとりへと立つ。 新年の身が引き締まるような空気の中、周囲には人一人存在しない。 霜が降りたのか、足を踏み出すたび足元の土がジャリリと音を立てる。 その音を聞きながら、私は習慣となっている鍛錬を開始した。 腕を前方へと突き出し、円弧を描くようにユルリと回転させる。踏み足は這うように低く、舞うようにリズミカルに。 一見してその動作は、太極拳のソレに酷似している。 同じ動作を繰り返してゆくと、次第に身体の中に《あるモノ》が蠢き始めた。 私はソレを逃がさぬように捕らえ、さらに動作を次の段階へと進めた。 大地を踏みしめる足から順に、腰へ、腹へ。さらに胸へと円運動は伝達され発達し続ける。 ソレにより身中に飼われる《モノ》は膨れ上がり、外へと躍り出ようとする。 ユルリ、ユルリと回転運動する動作は次第に激しさを増し、ソレに伴い周囲の大気がビリビリと震えた。 やがてその振動は極大となり、私の体の中から開放される。 《円》よ。 《螺旋》よ。 我が身中に生み出されし《モノ》よ。 今こそ解き放たれ、咆哮せよ。 掌から放たれた《螺旋》は大気を引き裂き、大地を鳴動させた。 ~2037年1月1日 AM 6:55~ 『S-1グランプリ ダイナマイト神姫バトル』最終決戦が終了した翌朝。 私はいつもどおりの時刻に起きた。いつもどおり朝の鍛錬を終えて、ダイニングへ向かう。そこでは私の母がお茶をすすりながら映像端末を操作していた。 「あいかわらず元旦の広告は多いわねえ」 開口一番、そんなことを呟いた彼女は思い出したように「あ、明けましておめでとう」と告げた。 「明けましておめでとうございます」 私もそれだけを告げて、母親から手渡された映像端末を手に取る。ややぶ厚めの四つ切画用紙大のフィルムに幾つものウィンドウが展開する。それらは皆近場の家電製品専門店の広告ばかりだった。無論他にも検索すれば大手デパートの売り出し広告もあるし、新年早々からフル操業の朝鮮玉入れの広告も見つかるに違いない。 私はそれらを消し、新聞のスポーツ欄を呼び出そうとした。消す寸前、家電製品の広告欄の片隅に、神姫関連の商品が載っているのが眼に留った。既に昨年十二月に新発売されたばかりの神姫MMSがプライスダウンされているのに驚く。 「武士型に騎士型、サンタクロース型ですか」 弟のハウリンタイプとはかなり趣を異にするソレに首を捻りつつ、新たに表示された新聞記事を読む。 案の定、大晦日に行われた《武装神姫バトル》の詳細とその後に続く弟の貴志の引退宣言についての記事が載っていた。さすがに大手新聞であるソレには引退宣言についての憶測は少なく、淡々と事実のみ列挙するに留まっていた。 事実については関係者の身内である私が知っている以上のことはなかった。また理由についてはあらかじめ弟から聞かされているため、詮索する必要も無い。私はさっさと映像端末をしまった。 「本当にアノ子、《神姫バトル》を辞めるつもりなのよね」 身近にあったラックに映像端末をしまう私に母がポツリと言う。 「去年の盆辺りから、貴志の決意については聞かされてたはずでしょう?彼としては《神姫バトル》より大切なものがあった。ただそれだけのことですよ」 私の言葉に母も納得したようにうなづく。弟の決意はそれだけ硬かったのだ。 朝食を終えて、身支度を整える。もうすぐ妹夫婦が元旦の挨拶に来る。昨年父を亡くしたため、慶賀自体も地味にならざる得ない。だが姪や甥にとっては、元旦はお年玉をもらえる日であることに変わりはなかった。 「母さん。ポチ袋は何処でしょうかね?」 尋ねかけたその時、私の携帯電話が鳴った。曲名は『犬のおまわりさん』。弟の貴士からの連絡だ。私は携帯電話の映像表示板を展開した。 「どうしました?ああ、明けましておめでとう。貴志」 “明けましておめでとう。兄さん” 映像表示板の中の弟は、多少憔悴しているようだったが元気そうだった。むしろ一つ肩の荷を降ろしたように、晴れ晴れとした表情を浮かべていた。 「昨夜の試合は見ましたよ。おめでとう。そしてもう一つ…“おめでとう”」 私の言葉に弟は眼を瞠り、一転して嬉しそうな表情となった。そうして一つ深呼吸して、彼はおもむろに口を開いた。 “そのことについて、一つお願いがあるんだ” 「?なんです。私にできることでしょうか?」 これまで弟の引退については話し合ってきた。これ以上加えるべき事柄があるのだろうか?私は弟に先を促した。 私に促された弟は、一度画面の下側にザッと視線を走らせると再びこちらを見つめた。なにやら感慨深げな目線が意味深である。 そうして彼が私に告げた言葉は、ある意味意外性のある内容だった。 “実は、ボクの神姫関連の機材を引き取って欲しいんだ” ~2037年1月7日 PM 6:10~ 床の上に山積みにされた段ボール箱を前に、私は腕組をした。 「まさか、これほどの量になるとはね」 正直、神姫関連の機材と聞いて甘く考えていた。身長十五センチ弱。人間の十二分の一スケールなのだから占める体積も知れたものだろうと捉えていたのだ。だが目の前に置かれた箱の群れは、学生の引っ越し荷物を思わせるボリュームだった。 一体、ナニが詰め込まれているのかと思いながら、私は箱を二階へと運んだ。未だ弟の部屋は残っている。とりあえずはそこへ運び、中身を取り出し整理するつもりだった。 …弟の手元には未だ《犬型MMS ハウリンタイプ ジリオラ》が存在する。充電ユニットたるクレイドルなど、神姫を維持管理するのに必須の機材もこちらに送って寄越したのには理由がある。 弟の貴志は、実はとある神姫メーカーへの入社が決まっている。入社していきなり、ジェネレーター関連の開発室一つを任される破格の待遇だ。 神姫メーカーに所属する者は、《武装神姫バトル》の公式戦に参加する権利を有しない。ソレが弟の引退の主な理由だ。 それゆえ今まで使用していた《武装神姫バトル》関連の機材は不必要となってしまう。代わりにメーカー側が提供する、これまでのモノより数段も上質の機材を使用することができるようになる。弟の神姫にとっては、そちらのほうが都合良いのだ。 内蔵されたジェネレーター出力をフルにすることで発動する《紅い光弾》。だがソレは神姫のボディ全体に著しい負担を強いる諸刃の刃だ。コアユニットしかりCSCしかり、既にジリオラの身体はボロボロの状態だった。そんなジリオラを一流企業の持てる技術力を全て投入して、可能な限り延命処置を行なう。ソレが弟の契約条件だった。 弟の部屋にダンボール箱を運び入れた私は、さっそく中身を取り出し始めた。あらかじめ指定されたとおりに機材を棚の上に並べてゆく。 私の眼に奇妙なモノが映ったのは、ほぼ全ての機材を並べ終えた時だった。ソレは、段ボール箱の片隅に隠すように置かれてあった。 「これは、何です?」 見たところソレは市販の神姫用ケースだった。幾重にも金属フレームと樹脂フィルムによってコーティングされており、ユーザーの手で起動されるまで神姫を厳重に保管するためのものだ。通常はこの上から商品名と素体、基本武装の画像がデザインされた包装用の箱に梱包されている。 見たところ、まだ中身は入っているらしい。どのようなタイプの神姫なのか、ケースの外からだけでは判別つかない。なにぶん樹脂の層が分厚く、内部を見通せないのだ。 弟はジリオラ以外の神姫を持とうとはしなかった。おそらく何かのイベントの景品として授与されたものをそのまま放置していたのだろう。いずれにしても弟に問い合わせる必要がありそうだった。 「ん?」 その時、持っていたケースの何処かで「カチリ!」と音が鳴った。私は不穏なものを感じ、ケースを机の上に置いた。すると見ている前でケースがその形状を大きく変え始めた。 まず、幾重にも覆っていた樹脂フィルムが花びらが開くように剥がれていった。そして現われた金属フレームが変形し、内部構造が露出する。 やがて完全に包装が剥がれ落ちて、ケースの中身が現われた。案の定、ケースの中には一体の《武装神姫》が納まっていた。 「サンタクロース型、か」 ソレは、いつぞやの広告に載っていた《武装神姫》だった。確か《サンタローズ型MMS ツガルタイプ》と言ったはずだ。 だがそれにしては奇妙な点がある。確かツガルタイプの髪の色は鮮やかな緑色だったはずだ。だが、今目の前のケースに横たわる《武装神姫》の髪はまっ白だったのだ。 それともプラチナブロンドと言った方が良いのだろうか?その髪は内側から輝きを放つような奇妙な光沢を持っていた。 果たしてこの《武装神姫》は何なのか? なぜ、自動的に開封されたのか? いったい何者がこの《武装神姫》を送って寄越したのか? ひとしきり首を捻り、私は当の弟に連絡を取る事を思いついた。懐から携帯電話を取り出し、弟の電話番号を呼び出す。 受話器から流れる呼び出し音を聞きながら待っている、私の服の裾を何者かが引っぱったのはその時だった。 “どうしたの?兄さん” 「ああ、貴志クン。一つ、尋ねたい事がありましてね」 携帯電話から流れてくる、弟の声に神経を集中しつつ私は言葉を続けた。 “尋ねたいこと?何かな?一体” 「実は、君が送ってきた荷物に関してなのですが」 相変わらずその何者かは裾を引っぱり続けている。私は小さくため息をつき、あらためて目線をソレへと向けた。 ソレは、無機質な眼で私を見上げている。 「その中に、どうして神姫が入っていたのですか?」 私の服の裾を引っぱり続けた何者か。 ソレはいつの間にか起動した純白の髪の《武装神姫》だった。 ~2037年1月8日 AM 7:58~ 寒風吹きすさぶ中、防寒具に身を固めた私はバイクを駆り国道250号線を疾走していた。 電動アメリカンバイク《ドレッドノート》のホイールインモーターはこの寒さにもかかわらず快調である。 シート下のスペースに駆動用モーターが搭載されたタイプと異なり、ホイール(すなわち車輪)中に直接モーターが組み込まれた形式をホイールインモーターと言う。この場合、軸側は固定され外側の磁石部分が回転することで駆動力を得ている(アウターローターと言う)。 三十年前ならば、『電動アメリカンバイク』などという代物は笑い話の種にしかならなかっただろう。だが今現在公道を走っている二輪車は、ことごとくがモーター車である。高効率、ハイパワーのSUMOモーターが2010年頃実用化され、普及した結果であった。 ちなみにモーターへの電力供給は統一規格化された燃料電池パックにより行われる。ガソリンスタンドならぬ電池スタンドでこれを交換する事により、速やかなエネルギー補給を可能にしているのだ(他にもこの方法はメリットがある。規格さえ同じならば、燃料電池自体のリニューアルも容易に行なえるのだ)。 内蔵されたヒーターによりグリップとシートはある程度暖かい。とは言え襟元から流れ込んでくる空気は身をすくませるには充分な冷たさだった。 元旦を過ぎ、車両の数は元へ戻ってきている。神戸方面への車列はよどみなくひたすら東へと流れ続けていた。 私は後方の安全を確認すると、三車線の左から右側へと慎重にバイクを移動させた。 やがて前方左側に小さな看板が見えた。深い緑の色の地に金で《パティスリー カラン・ド・アッシュ》と表示されている、落ち着いた中にも人目を引くソレを目指し、私はハンドルを切った。 目的地の看板の横には、緑色のログハウス様の屋敷が建っていた。勾配のゆるい屋根の、二階建ての建造物である。建物の正面には四~五台分の駐車スペースがあるが、私はバイクをそこではなく建物横の小さな小屋の前に停めた。 小屋は屋根付きの店員用駐車スペースとなっている。屋敷は元々個人住宅向けの輸入用ログハウスの改造であり、小屋本来の機能は倉庫も兼ねている。 リモコン操作で駐車小屋の扉を開け、《ドレッドノート》を転がし入れる。小屋の奥には小麦粉や砂糖の袋が積まれており、手前には小型車が二台駐車されていた。 《ドレッドノート》のキーを抜き、小屋を出る。リモコンを操作して扉を完全に閉鎖した。 まだ『準備中』の札が懸けられた《カラン・ド・アッシュ》のドアを潜り抜ける。 すると、二人分の女性の声がかけられた。 「いらっしゃいませ!あ、オーナー」 「やほ~!グッモーニンッ!オーナー」 ショーケースの向こう側に一人、広い店内のテーブル席に一人、それぞれ女性が立っていた。ショーケース側の女性は白いパティシエ姿。テーブル側の女性は黒と白を基調としたウェイトレスの格好をしている。 ちなみに初めに私に挨拶をしたのがパティシエの女性であり、二番目に挨拶をしたのがウェイトレスである。 「やあ、おはよう。睦さん。愛クン」 そう。私はこの《パティスリー カラン・ド・アッシュ》のオーナーなのだ。五年ほど前に開店したここは本店であり、他にも昨年神戸と尼崎に二店舗開店している。最近ではタウン情報誌にも紹介されるようになり、おかげさまで客数も増えた。いずれは大手デパ地下にも出店したいと考えている。 パティシエの女性は《衿沢睦(えりさわ むつみ)》。我が《カラン・ド・アッシュ》の誇るメインのパティシエである。ウェイトレスの方は《愛川愛(あいかわ あい)》。本店のウェイトレスを取り仕切るチーフである。 睦は人気商品の《胡桃と杏のブラウニー》をショーケースへ運び入れようとしていた。一歩一歩脚を運ぶたびに胸元が大きく揺れた。全体にポッチャリ気味の彼女だが、バストはそれに輪をかけて大きい。否「Hを超えてIな」バストはもはや雄大な光景と言っても過言ではない。これで普通に歩いているときはまだ良いが、厨房で作業をしているときはソレはもう大変な事となる。 「あ!」 ショーケースまであと数歩というところで、パティシエは何かにつまづいた。ブラウニーを並べたプレートが大きく傾く。その光景を目撃した私は―。 「ひゅううううっ」と軽い息吹の音と共に、私は瞬時に睦のそばに移動した。私の感覚では、彼女は倒れかけた姿勢のまま静止していた。否、愛も含めて店内の全てが停まっている。おそらく、店外に出れば通りの車両は全て停止しているだろう。 私はまだ空中にあるプレートに手を伸ばし捕まえた。バラけそうになったブラウニーを元に戻し、反対の腕で倒れかけた睦の身体を抱きとめる。 「あ!」 静止していた時間が戻った。まだ睦は驚いた顔をして空中を見つめている。そうして私の腕に自分が抱きとめられていることに気付いて、顔を紅く染めた。 「気をつけたまえ」 ブラウニーを乗せたプレートを手渡しながら、私は告げた。 「ただでさえ君は…バランスが悪いところがあるからね。モノを運んでいるときは、ソレに集中すべきだ」 「は…い」 どちらかと言えば『おっとりとした』表情に笑顔を浮かべて睦はうなづいた。 睦は厨房へと戻っていった。AM10:00開店まで時間が無い。開店時にショーケースの中身が全て並んでいなくてはならないのだ。 「うっひょ~どーしたのオーナー?ソレ」 店内の清掃を一通り終えた愛が近づいてきた。私の右手をホウキの先で指し示しながら問う。あまりオーナーに対する敬意が感じられない態度だが、彼女はコレが常である。そうした点を補い余って、彼女のバイト他店員に対する掌握術は巧みだった。 ちなみに愛のウェイトレスの格好だが、他の店員とは大幅に異なる点がある。《カラン・ド・アッシュ》の制服はかなりシックなメイド風装束だが、愛のスカートが一番短いのだ。テーブルに皿を置こうと少しでも屈むと、中身がほぼ覗けるくらいの按配である。コレに対しては当人が「チーフ権限ですから~ナニしても良いのですよ~」と言って聞こうとはしなかった。まあ、このおかげで男性客も(『質』に多少問題があるが)増えているのであまり強く異議は唱えないようにしている。 《カラン・ド・アッシュ》がここまで発展してこれたのも、彼女ら二名によるものが大きい。五年前、睦は才能があるが無名のパティシエだったし、愛は現役高校生に過ぎなかった。何名も雇い入れた中から、彼女らを抜適したのはこのわたしである。 “ソレ” 愛が指し示した通り、私は右手に荷物を持っていた。樹脂製の縦に長いタイプのケースである。小型の工具を入れるのにも用いられるケースに愛は胡乱げな眼を向けていた。 確かに、私がこうしたものを携えて店に来る事は極めて珍しい。もっぱら私の仕事の内容は、各店舗の経理チェックと今後の店舗展開上の企画立案である。それらは二階のオーナー室で行なえば済む話だった。 「うむ」 私は、愛の指摘にうなづいてみせた。 「弟からの預かりモノでね。…実は今日のお昼頃、この件で来客があるんだ。神姫関連の会社の名前を言ったら、その方をオーナー室まで案内して欲しいのだが」 「りょ~かい!」 弟の貴志が《武装神姫バトル》の関係者である事は、私の周囲の人間にも広く知られている。何の疑問も無く愛は理解してくれた。 海軍式の敬礼をする彼女にうなづき、私はオーナー室へと続く階段を昇っていった。右腕にぶら下げたケースを見ながら、私は小さくため息をつく。 (まったく、どうしてこのような事になってしまったのやら?) ~2037年1月8日 PM 13:05~ 一通り仕事を終えた私は、デスクの下から“例”のケースを取り出した。 通常ならば、ここでの仕事を終えた後に残りの二店舗に赴く。全体の経理等はこちらで済ますため、純粋に店舗と店員の状況確認でしかないのだが、やらないよりやった方がましだと考える。 …どちらかと言えば各店舗の士気の維持の側面が強いのだが、バイトや店員の中から“使える”人員をピックアップする側面も持つ。また実際に訪れた客の反応を見ることも大事だった。 とは言え、愛に告げたように今日は来客がある。外出するわけにはいかない。 全てはこのケースの中身が原因だ。 私の記憶は、昨日起きた出来事まで遡る。 ~ 回想 2037年1月7日 PM 8:21~ 「あなたが、灰原貴志様ですね」 開口一番、その《武装神姫》は私に尋ねた。 私は携帯電話を握ったまま、机の上を見下ろした。受話器の部分からは未だ不審そうな弟の声が聞こえてくる。 「《武装神姫》って…ああ!《神姫BMA》のお偉いさんから送られてきたサンプル品の事かな?試して欲しいとかって無理矢理押し付けられたんだけど、ボクとしても《ジリオラ》でいっぱいいっぱいでね。そのまま放置していたんだ。それになんとなく怪しかったからね。君子危うきに近寄らず。そのままそっちへ送り出したんだよ。別に気にしなくていいから、そのまま保管しといて欲しいな」 「なるほど」 弟の話からどうやら事の経緯を知ることができた。いずれにしても、彼の勘は正しかったと言うことになる。起動して、いきなり自らマスターを名指しする《武装神姫》なぞ聞いたことが無い。胡散臭いにも程がある。 「あの!灰原貴志様。はやくご返事を」 未だ私から有意な反応を得られない事に、焦れた様子で相手は話しかける。私はソレに対し、心底すまない気持ちで告げねばならなかった。 「大変気の毒な事を告げねばならないのだが…」 「ん!ん?」 大量の疑問符を面に浮かべ、相手は私の顔をのぞき見る。 「私は、君が捜し求める《灰原貴志》と言う人物ではないよ」 「そんな!だって私は《灰原貴志》本人の手元に送られてくるようにと」 どうやら私の告げたことは大層なショックを与えたらしい。件の《武装神姫》はその身をふらつかせた。 「私の名前は《灰原聖志》。《灰原貴志》の兄だよ」 「《灰原聖志》…兄?」 「そう。今この場には君の求める《灰原貴志》はいない。付け加えて言うなら、弟の貴志はすでに《武装神姫バトル》から引退してしまった。もはや新たな神姫は必要としないそうだ」 「そんな!それでは、私、ハ…」 身元不明の《武装神姫》は虚ろな眼で私を見上げた。その唇から漏れる声は金属が擦れ合うような雑音混じりで、もはや人間の可聴域を逸脱していた。 「ワ、た、シ、もウ」 そして彼女はバッタリとその場に倒れ込み、二度と目覚める事はなかったのだった。 ~2037年1月8日 PM 13:10~ こうして、事態は現在に至る。 あれから謎の《武装神姫》は完全に停止し、再起動する事はなかった。 機能停止の原因は機構的なものではなく、多分にプログラム面の支障の方が大きいのだろう。元々弟に合わせて設定していたものが、私に接蝕して不良化したのだ。 私はそう判断して、弟から聞き出した“《神姫BMA》のお偉いさん”へと連絡をとった。相手側もこうした事態を予想していなかったらしく、直ぐにこちらへ赴く事を了承した。 「はてさて…もうそろそろ待ち合わせの時間だと思うのだがね」 時計を見、思わず私が呟いたその時、内部回線で階下からコールが入った。出ると愛で、彼女は来客が来た事を告げた。 “オーナー、お客様が見えられました。” 訪れた女性は自ら《新高山新菜(にいたかやま にいな)》と名乗った。 今や全世界的アミューズメントとなった《武装神姫バトル》。その全てを統括する《武装神姫バトル管理協会》こと《神姫BMA》からのエージェントだと言う。 年齢は二十代のギリギリ後半くらいか、おさえ気味なメイクだがハーフとも見まがうバタ臭い顔立ちは十分派手である。どうやら彼女はバイクでやってきたらしい。青いライダースーツ姿にショートカットが活動的な印象を与えた。 彼女はオーナー室を訪れるや、例の《武装神姫》を見せるよう要求した。 ソレについて否やはなかった。何より機能停止した神姫の事が気がかりだったこともある。 また通常ならざる神姫自体の正体についても関心があったからだ。 「やはり、あらかじめ登録されたオーナーとの齟齬による混乱が原因でしょうね」 神姫を検めて彼女はそう言った。どうやらメモリーを削除して、CSCを組み替えればこの《武装神姫》は再起動するようだ。 「なにはともあれ、壊れていなくて良かった。なにせ弟からの預かりモノなのでね。それはそうと…」 私は、今回の出来事の元々の原因を思い出して相手の顔を見た。 普通ならばメーカー側からオーナーを指定するなぞ極めて稀な、否あるはずがないことである。私がそのことを指摘すると、新菜嬢は微妙に言葉を濁した。 「実は、《神姫BMA》より《灰原貴志》氏に対して依頼事項があったのです。この神姫を用いて、《武装神姫バトル》に参戦していただきたいと…」 「コレはそのための神姫だと?なるほど。だがあいにくと弟は《神姫バトル》から退いてしまった。ご期待にはそえかねるね。実際、この神姫を不要なものとして送って寄越したのも彼だ。とてもではないが、復帰を望めるものではないよ」 私の指摘した否定的意見に新菜はうつむき、唇を噛んだ。 ややあって顔を上げた彼女は、すがるような目付きで私を見つめた。 「ならばその依頼、貴方に受けていただけませんでしょうか?」 ~2037年1月8日 PM 14:30~ 奇妙なことになってしまった。 ハンドルを操りながら、私は考えた。 国道250号線を東に向かう、道行の途中である。 既に明石海峡大橋の下を過ぎ、神戸の近くまで来ていた。 私はバックミラーで後方を確認しながら、チラリと横を見た。そこには座席におさまって、《神姫BMA》関西地区代表 新高山新菜が居る。 ―《武装神姫バトル》に参加して欲しい。 結局、彼女の懇願にほだされる形で私は連れ出されてしまった。鬼気迫るその様子に、単にゲームに参加させるだけが目的ではないように感じたし、私自身の好奇心があった。それに《カラン・ド・アッシュ》の事は一日ぐらい睦クンと愛クンに任せてかまわないだろうとの判断もあった。なにやかやでこのところろくに休暇を取れていなかったからだ。 だからこうして私は新菜嬢と共に目的地に向かっている。場所は神戸―尼崎間にある《神姫センター》のいずれからしい。今彼女は懸命に携帯電話で連絡を取っている。 ところで、今私は普段乗り慣れた《ドレッドノート》には乗っていない。今私がハンドルを握っているのは、新菜嬢が《カラン・ド・アッシュ》まで乗ってきたマシンだ。 名前を《ガードキャリー》と呼ぶらしい。 これは厳密にはバイクではない。かと言って四輪車でもない。分類的には『トライク』、それも『サイドバイク』と呼ばれる類のものらしい。 一見して『サイドカー』に見えるのだが実はそうではない。『サイドカー』ならばバイク側にのみ動力があるはずが実は側車側に動力があるのだ。すなわち後方二輪で駆動する三輪車だ。だから『トライク』とも呼ばれる。バイク本体の前輪はもっぱら方向の変更のみに用いられる。私はそのバイク側にまたがりハンドルを握っていた。 一方、新高山新菜自身はサイドカー部分に乗っている。小型乗用車を一回り小さくしたくらいのソレの中身はがらんどうの箱ではなく、なにやらぎっしり機器類がおさまっているようだ。本来二人くらい手足を縮めれば入りそうなスペースは、外側から見る限りでは人一人がやっとだ。 「ん?」 と、携帯電話を操っていた新菜嬢の様子が変わった。なにやら慌てふためいて電話を切ると、サイドカー内前方のコンソールにあるマイクを摘んで口元へ寄せた。 「…今から、指示する場所へ急いでください!」 新菜嬢の残り香が漂うヘルメット内に音声が響き渡る。よほど慌てていたのか、ボリュームを全く絞っていないソレに私は顔をしかめた。 どうやら、行き先が決まったらしい。と言うか今まで決めていなかったのが不思議である。 なおも移動先を指定しようとする彼女に、音声を絞るよう告げて私はうなづいた。 「了解した」 いったい、私が《武装神姫バトル》に参戦する事にどんな意義があるのか? 心の内の声がうっかり漏れて聴こえてしまわないよう、こっそりため息をしながら私はハンドルを方向転換した。 ~2037年1月8日 PM 14:45~ 私たちが到着したのは、三宮元町にある《神姫センター》だった。ビルの名称を《エデン・ゴッデス》と言う。十階建のビルの下部の層がぶち抜きで巨大な空間となっている。その中に大小混ぜて複数の筐体が設置されている。構造上林立する巨大な支柱はギリシャ風の外装が整えられていて、あたかも神話のコロッセオのようである。 新菜嬢の権限か、貨物運搬用のエレベーターに乗って我々は《ガードキャリー》ごとこのフロアに到着した。 エレベーターのドアが開いた瞬間、耳に届いたのは異様な叫び声と少女たちの悲鳴だった。 否、少女の悲鳴ではない。ソレは《武装神姫》たちの悲鳴だった。 フロア中央の一番巨大な筐体。一辺が十メートルくらいもあるそこから悲鳴が響いていた。どうやらファーストランカー同士の戦いにも用いられる、最大級の戦場のようだ。もっともファーストランカーの《武装神姫バトル》が常時行なわれるわけではないので、別の用途で用いられる事の方が多い。 どうやら複数の神姫が参加した、バトルロイヤル戦のまっ最中だったようで筐体内には起伏の緩い平原が広がっていた。 今、そこには複数の武器と―複数の《武装神姫》の残骸が転がっている。無事動いている《武装神姫》は数体しか残っていない。後はこれら神姫のオーナーなのだろう。何人もの若者が周囲を取り囲んでいる。 《武装神姫バトル》、それもリアルリーグならば神姫たちが『壊れる』のは普通だ。私も最初その類だと捉えた。だが目の前の神姫たちは中枢たるヘッドコアや胸部CSCまで引きずり出され、ぶちまけられていた。 これは尋常な光景ではない。 トライクを降りた新菜嬢が唇を噛む様子に私は確信した。 「おい!やめろ!やめてくれ!」 一人の若者が筐体の透明な壁に取り付いて叫んでいた。その声に引かれて若者の睨む先を見た私は、一瞬眼を疑った。 「何なんですか?アレは」 “ソレ”は《武装神姫》ではなかった。 強いて言うならば『直立二足歩行する蜘蛛』。 サイズは神姫よりふた周りほど大きいだろう。神姫を人間の少女サイズとすると、成人男性が分厚い着ぐるみを着込んだように見える。全身をまっ黒な毛で覆われたソレは、驚くほど細く長い両腕両脚を蠢かしている。 頭部に当たる部分には同じく毛むくじゃらの顔があり、その中でまっ赤な眼が八つ輝いている。 《蜘蛛怪人》とでも称すべき異形の腕の中には、今一体の《武装神姫》が拘束されていた。タイプはマオチャオ。機敏な行動と格闘能力がウリの《武装神姫》である。 どうやらカスタムされていると思しきピンクの髪のマオチャオは、己が主人のほうへ必死に腕を伸ばそうとしていた。だが彼女の全身は《蜘蛛怪人》から放出されたと思しき、粘液性の『糸』に包まれ身動きが取れない。さらに頭部を《蜘蛛怪人》につかみ上げられ、逃げる事はかないそうになかった。 「アレは一体?」 私が背後から訪ねると、新菜嬢は振り返らず応えた。 「アレは犯罪結社《デバッガー》の怪人です!」 《武装神姫》が犯罪に巻き込まれる事は多々ある。 そもそも精密機器たる《神姫》の輸出入は厳しく制限されている。ウラニウム濃縮に用いられる遠心分離機同様、北中国や統一朝鮮への流出は完全に禁止されていた。 しかしながら後述する理由により、《神姫》を求める第三国は非常に多く存在する。貨物船の臨検など水際での阻止は行なわれているものの、密貿易しようとする勢力は後を絶たないのだ。 無論、《神姫センター》では《神姫》とそのオーナーを完全登録制とし、さらに車検のような定期健診制度を設けて管理体制を整えていた。違法な取引はほぼ全面的に禁止されていると言って良い。 従って《神姫》を密かに手に入れるためには“盗難”しか手段はありえなかった。すでにオーナーが居る《神姫》を拉致し第三国に売り飛ばす、そうした犯罪組織が地下に存在していたのだ。 こうして“拉致”された《神姫》はメモリーを消去され売り飛ばされる。主な用途はマイクロマシン・ナノマシン製造機械としてだ。 すなわち人間の十二分の一スケールの存在が微小機械を製造し、さらに微小機械が極微小機械を生産する。その連鎖によりナノマシンの大量生産が極めて容易となる。 2037年の日本国は世界でも有数のナノマシン生産国となっていた。その理由の一つが《神姫》の普及であったことは疑問の余地は無い。《神姫》のパーツすら《神姫》が製造する時代となっていた。 《神姫》を強奪し、己の私欲のため用いる、それら犯罪組織を統括する上位組織が現われたのは約一年前だと新菜嬢は語った。 《デバッガー》と呼ばれるその組織は瞬く間に地下世界を支配し、思うが侭に力を振るい始めたのだ。対立する組織は全て力で叩き潰された。 《デバッガー》の最大の特徴は、《怪人》と呼ばれる特殊なMMSを犯罪に使用したことだ。動物と人体を合成したような異形のMMSは戦闘能力に富み、各種破壊作業に用いられた。 だが《デバッガーの怪人》の最大の特徴は単なる戦闘能力にあるのではなかった。 マスターの命に従い、武器をとって対抗しようとした《武装神姫》たちが遭遇した異常な事態。 彼女たち《武装神姫》は《デバッガーの怪人》に指一本触れることができなかったのだ。 「どうしてです?どうして、《武装神姫》は《デバッガーの怪人》と闘えないのですか?」 成す術も無く蹂躙されてゆく《武装神姫》たちを目の前にして、私は新菜嬢に疑念を投げかけた。 「仮にも戦うための存在である、彼女たちが戦えない理由は?」 「理由は…あります」 新菜嬢は思い詰めた顔でうなづいた。 「《武装神姫》は《デバッガーの怪人》と闘えません。なぜならば、そのように創られてしまっているからです!」 蜘蛛のような《デバッガーの怪人》の掌の中でマオチャオのヘッドユニットが音を立てて砕けた。 「マ、スタァ…」 同時にもう一本の腕から生えた針状の突起が胸板を貫き、CSCを打ち砕く。 「フェリ!フェリーッ!」 自分の神姫が破壊される光景を目撃したマスターが叫び声を上げた。 その一見して無意味な破壊に私が批判的な目を向けると、新菜嬢はおもむろに口を開いた。 「ここ一ヶ月、《デバッガーの怪人》は《神姫》を強奪するのではなく、無意味な破壊を繰り返しています。おそらく《デバッガー》上層部で何かあったと思われます。そして…」 彼女は《蜘蛛怪人》を指差した。 「《武装神姫》は彼ら《怪人》を攻撃できません。攻撃しようとすれば、《三原則》が発動するからです」 「《三原則ですって?」 聞きなじみのあるその言葉に私は耳を疑った。 《三原則》または《ロボット三原則》。 《神姫》を始め人間社会に出るロボットのプログラミングの根底には、例外なく以下の条項が刻まれている。 すなわち― 第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。またその危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。 第二条:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第一条に反する場合には、この限りではない。 第三条:ロボットは、前掲第一条及び第二条に反する恐れの無い限り、自己を守らなければならない。 これらはロボットが人間側の意図に逆らって制御不能に陥るのを防止する目的で立案されたものだ。これが意味するのはすなわち『ロボットは人間に武器を向けることができない』 と言う事になる。 「ちょっと待って下さい!それじゃああの《怪人》は人間である…と?」 私は自分の顔が引きつるのを感じた。おそらく半笑いを浮かべたであろう私の顔を、新菜嬢は黙ったまま見つめ、無表情なままうなづいた。 その時フロア奥の扉が開き、幾人かの足音が近づいてきた。顔を上げればこのビルの警備員らしき制服姿の男女がこのアリーナに向かって来るのが見えた。彼らはあらかじめ何が起きているのか把握していたのだろう。即座にパラライザーを抜き、アリーナ中央に向けた。 「やめろ!即座に破壊活動を止め、武器を捨てて投降しろ!」 パラライザー=麻痺銃とは言え、当たればかなりの苦痛を味わう。ましてや人間の十二分の一スケールしかないMMSならば、パラライザーの弾が当たっただけで戦艦の主砲が直撃したくらいのダメージを受けて当然だ。 だが、《蜘蛛怪人》はあざ笑うが如く肩を揺すると、おもむろに腕を伸ばした。手首の辺りにギラリと鈍く光るモノが見えた。先端の尖ったソレを警備員に向ける。 次の瞬間、空気が抜けるような音が連続して響いた。《蜘蛛怪人》の手首から銀色の輝きが飛び、警備員たちに突き刺さった。警備員たちはうめき声を上げてバタバタと倒れていった。 「まさか、毒針?」 見れば非常に微小な針が警備員に突き刺さっている。突き刺さった箇所は青黒く腫れあがっていた。 「いけない!」 新菜嬢は叫ぶと、《ガードキャリー》に戻っていった。荷台に積んであったケースから件の《武装神姫》を取り出し、なにやらいじり始めた。 おそらく《武装神姫》を再起動させるつもりだろう。だが先ほど彼女は《武装神姫》は《デバッガーの怪人》に抗し得ないと述べたはずだ。いったい、どうしようと言うのだろうか?私はいぶかしみ、彼女の元へ近づいていった。 「どうするつもりですか?」 私が尋ねると、実に意外な言葉が返ってきた。 「こうなれば仕方がありません。貴方に闘っていただきます」 「私に!?」 思わず私が声を上げた瞬間、彼女の掌の中にあった銀髪の《武装神姫》がまぶたを開いた。 「あなたが、私のマスターですね?」 覚醒すると同時に、その銀髪の《武装神姫》は私の方へ眼を向けた。 「失礼ですが、お名前は?」 口調はひどく丁寧だ。落ち着きがあり、知性も感じさせる。人間の女性ならば私は好意を抱いていただろう。 おそらく、CSCを交換した時点で私との最初の邂逅の記憶は失われたはずだ。 なのに“彼女”は眼をしばたき、『懐かしさを覚えて記憶を探るような』表情で私の顔を見つめた。 「あ、ああ」 気がつけば、私はその“視線”に押されるように口を開いていた。 「私の名は《灰原聖志》だ」 警備員たちを倒した《蜘蛛怪人》は残された《武装神姫》たちへと向かった。良く見れば彼女たちの四肢は怪人の針により地面に縫い止められており、逃げる事はかなわないようになっていた。 ソレを見た《神姫》のマスターたちは抗議の声を上げ、再び筐体に戻って行こうとした。 「よせ!貴様、何のつもりだ!?」「放せ!僕のリルケを放せ!」 「…糞うるさい屑どもが、まだ居汚く残っていたのか?」 群がる《神姫》オーナーたちを《蜘蛛怪人》はわずらわしげに振り返った。再び彼らに毒針が向けられようとしている。その様子に気付いた新菜嬢は、再起動した《武装神姫》を私に託すと、今度は《ガードキャリー》のサイドカー部分へと向かった。 「あの人たちに危害が及ばないうちに、私たちで何とかしないといけません!お願いします!」 正面コンソールになにやらカードキーらしきものを挿入し、さらに認証番号を打ち込む。するとサイドカー本体のエンジンが始動し、一斉に、メーターやランプが明滅し始めた。さらに見ている前で異変は続く。サイドカー内部のパネルが展開し、壁一面にレンズとスピーカーを組み合わせたようなデバイス群が姿を現したのだ。 「来て下さい。この中に…入って」 いぶかしむ私たちを新菜嬢は手招きした。仕方なく言われるまま私は歩んでゆく。そうして私はサイドカー内部を覗き込んだ。 「このシステムは、一体?」 「《デバッガーの怪人》には、人間の意志が宿っています」 微調整なのか、まだコンソールをいじりながら新菜嬢は続けた。 「《憑依》と言って良いものです。要は人間の意識を肉体から剥離させて、別のMMS素体に移すという事です」 「なるほど」 彼女の説明に私は納得した。根本的な原理は分からないものの、これでまだ私が感じていた疑問点は解決した。 《武装神姫》にとって、『人間』の魂を宿したMMSは『人間』と認識される。 彼女の話した内容が真実ならば、《デバッガーの怪人》は確かに“人間”なのだ。 「それでこのデバイスは…まさか?」 新菜嬢は私の言わんとした事を察したようにうなづいた。 「このデバイス…《MMS=ヒューマン・ソウルコネクトシステム》は《デバッガーの怪人》が使用しているものと基本的に同じです」 そうして彼女は、私の意志を確かめるように見つめた。 「これで貴方の意識を、その《武装神姫》に憑依させます」 彼女の手に引かれるままに、私はサイドカー内のデバイス=《MMS=ヒューマン・ソウルコネクトシステム》の中に押し込められた。 中から見れば、サイドカー内が二重殻の構造になっているのが分かった。本来の外装の内部に、銀色の『繭』が押し込められていたのだ。 件(くだん)の《武装神姫》は、『繭』の外に設置された『クレードル』へと新菜嬢の手によりおさめられた。『クレードル』とは充電及びホストコンピューターへのデータ送受信を行う、神姫用休眠ベッドのことである。 「《MMS=ヒューマン・ソウルコネクトシステム》起動します!」 そうして、私を収めた『繭』がゆっくりと閉じられていった。 閉じられる寸前、『クレードル』内に仰臥していた《武装神姫》が身を起こした。彼女はこちらを見つめ、何か言おうとしていた。 「私の、私の名前をつけて下さい!」 思い出した。起動直後の《武装神姫》は、己のマスターの名前を登録すると同時に己の名称を記憶する。まっ白な心に己の新しい名前を永遠に刻み付けるのだ。 「君は…」 『繭』が閉ざされるまで、ほんの少しの間しかなかった。考える時間も与えられなかった私は、とっさに告げた。 「君の名は、《真珠》だ」 視界が闇に包まれた。 完全に密閉された瞬間、『繭』の外からマイク越しに新菜嬢の声が響いた。 「《MMS=ヒューマン・ソウルコネクトシステム》発動します!」 次の瞬間、“私”の意識は銀色の濁流に呑み込まれた。 閉ざしていたまぶたを開き、私は周囲を見渡した。 世界は一変していた。 目の前を巨大な影が通り過ぎていった。風の音が唸り、同時に地響きが轟く。遠く、近く人々のわめく声が聞こえてくる。すぐ傍らで呼吸の音が響いた。見上げると起伏に富んだ肌色の壁が目の前で上下に揺れ動いた。肌色の壁に刻まれていた傷がまっ二つに割れて、濡れた白と黒の構造が露出した。白に囲まれた黒のその奥、深遠を思わせる穴の直径が引き絞られる。眼を凝らせば、深遠の中心部に立つ少女の姿があった。どこか見覚えのあるそれをじっと見詰めた私は、次の瞬間ようやく思い至った。 「あの“子”か!」 そう。私が眼にしているのは、先ほど《真珠》と名づけた《武装神姫》だった。同型機にはない純白の髪がそのことを教えてくれる。 だが、今目の前にあるのは《真珠》そのものではない。私の前に《真珠》が居るのではないのだ。そうではなくて―。 誰かが見ているのだ。 《真珠》を。そうして《私》を。 私が覗き込んでいたのは、『《真珠》を覗き込んでいる』人間の瞳の奥だった。あまりにスケールが巨大なため、最初は何なのかまるっきり分からなかったのだ。私は、ヒトの眼に映りこんだ像を見ていたのだ。 そしてさらに気付いたもうひとつの事実。 「《武装神姫》になっているのか、この私が…」 腕を差し伸べて、しげしげと眺める。《武装神姫》の外装は、人間の皮膚構造に似た軟質の多層構造でできている。そのためだろう。一見、普通の人間と全く変わりないように見えた。しいて相違点を挙げるならば、しわの入り方や産毛の有無など技術的に再現不可能な点だろうか。妙にツルツルして見える。 さらに眼を転じると、生身の自分にはない起伏が見えた。《武装神姫》が女性体のみであるため、この違和感は仕方が無い。だが何とかならなかったものかと私は内心頭を抱えた。 「第一、自分でない身体を上手く動かせるかどうか…?」 そのように口の中で呟いた時、別の声が聞こえた。 “大丈夫です。動作状況の齟齬は私が補正します” この声は?聞き覚えのある声に私は尋ね返した。 「《真珠》クンかね?私がこの身体を使っているのに…何処に居るのかね?」 “貴方の中です。厳密には、私はこの神姫MMSの中で動作プログラムとして存在します。貴方の本来は人体を動かそうとするコマンドを、MMS用に『翻訳』するのが私の役目です” 「なるほど」 《真珠》嬢の言葉に私は納得した。確かに、人体を動かそうとする私の意志と電子信号的な《武装神姫》内部の動作コマンドとの間には共通点は存在しない。ソレを間で転換する『翻訳ソフト』的なモノが必要となる。ソレを《真珠》嬢が行おうと言うのだ。 「分かりました。ならばお力添えをお願いします」 “ハイ!任せて置いてください!” 「ごめんなさい!もう、いいかしら?」 頭上から大音響が降ってきた。見上げれば、巨人と化した新菜嬢が私を見下ろしていた。 どうやら私が《武装神姫》の身体に慣れるのを待っていたらしい。私はうなづき返し、クレードルから出ようとした。 「待って!ここから出ないで、奥へ行ってちょうだい!」 だが、新菜嬢は私にサイド・カーの奥へ行くよううながした。その指示に従い、クレードルから起き上がった私はその方向へと向かった。 “私”が収められている『繭』の表側には、《神姫》用のキャットウォークがあつらえられていた。その上を歩み、私はサイド・カー後部へ向かった。 「これは」 そこは、巨大な格納スペースとなっていた。あくまで《武装神姫》スケールだが、数台の車両を停めておくだけの余裕があった。一方の壁には、補修用の設備さえ備えられている。 その中に、一台のマシンが停め置かれていた。 巨大な(無論、神姫スケールだが)、ツアラー用バイクの趣すら感じさせるソレは武器の塊だった。まるで重火器やミサイルに車輪が生えているように見える。 “ソレに乗って下さい。対《怪人》用の武器が装備されています” 私の中で《真珠》が告げた。 「ふむ」 正直、私は気が進まなかった。こうした、いかにも重火器に手を触れた経験はない。果たして私が扱えるのか疑問があった。第一、件(くだん)の《怪人》に効くのかどうか? …むしろ、身一つの方が私の好みなのだが。 そのように思いながら、仕方なくも私は重武装バイク(?)にまたがった。 バイクのフロント部分にバックミラーが付いていた。それを覗き込んだ私は、奇異の念にとらわれた。 「髪が、赤い?」 ミラー越しに見た私=《武装神姫》の髪は色が変化していた。まるで紅玉(ルビー)を融かして染め上げたように、透き通ったまっ赤な色をしている。 “一種の偽装です。普段の『私』と気付かれないような措置です” 首を捻る私に《真珠》が説明してくれた。 「なるほど」 うなづき私はバイクのモーターを始動させた。かすかな駆動音が車体を震わせる。 やがて正面のハッチが開いていった。位置的にはサイド・カーの後部に当たる。 「それでは…ええと」 バイクの名称を唱えようとして、私は迷った。 “このバイクの名前は、《ガードランザー》といいます” 私の困惑を察してか、《真珠》が教えてくれた。 「それでは…《ガードランザー》発進する!」 私はアクセルを思い切り吹かせた。一瞬で出力最大となったホイールモーターが一際高い唸り声を発した。半ば空回りのタイヤの音を響かせながら、《ガードランザー》は緩いスロープになったハッチを駆け下りていった。 ~2037年1月8日 PM 14:55~ 大きく迂回するコースを描いて、私は《ガードランザー》を目的地へと向かわせた。場所は《デバッガーの怪人》が暴虐の限りを尽くす、《武装神姫》バトル用アリーナである。 私が乗ってきたトライクは、横目では聳え立つ巨大な山脈のように見えた。鋼と樹脂とセラミックで造られた、人工の山脈である。 考えてみれば不思議な話である。今現在でも私の身体『だけ』はあの中に納まっているのだから。己の魂?意志?がいかなる方法でこの仮の身体に宿っているのか?その間、自分の身体は死んでいるのも同然ではないか?など様々な不安や妄想が内心渦巻いて仕方がなかった。 兎に角かなりの高速で飛び出したため、マシンは急カーブの軌道を描く事になった。だが優秀なオートジャイロを搭載しているらしく、《ガードランザー》の姿勢には全く危なげがなかった。 やがて前方に目的地が見えた。《武装神姫》バトル、ファーストランク用アリーナ。今現在はバトルロイヤル用ステージとして使用されている巨大な競技場である。 “アンカーを射出します” 私の意識に重なるように《真珠》の声が聞こえた。私の意志とは別に《武装神姫》MMS素体の指が動いて、バイクのコンソールを操作した。 次の瞬間、《ガードランザー》の一部が展開し、碇のようなパーツが放たれた。急角度で射出されたアンカーは、まるでロケットのように急速上昇してアリーナ上部の壁面へと突き刺さった。 “引き寄せます” 《真珠》の声と共にアンカー後端につながったワイヤーが手繰り寄せられ、ソレと共に《ガードランザー》はアリーナの外壁を垂直上昇していった。 アリーナの外壁を乗り越える形で、《ガードランザー》は内部への侵入を果たした。 仮想現実空間である、緩い起伏の草原に降り立った瞬間私が眼にしたのは、今しも神姫のオーナーたちに毒針を発射しようとしている、《蜘蛛怪人》の姿だった。 どうやら一部の神姫オーナー達が、己の《武装神姫》を守ろうとアリーナの内側へ侵入したらしい。メンテナンスハッチと思しき四角い巨大な穴が、草原の真ん中にポッカリ開いていた。 幾人かのオーナーが《武装神姫》を拾い集め、残るオーナーが身を挺して《蜘蛛怪人》から彼らを守ろうとしている。人間の目には二重写しにも見える、バーチャルリアリティーの世界で良くこれだけの事をしたものである。私は感心すると同時に、己の身の内に潜む《真珠》に声をかけた。 「銃を!相手の注意を引き付けます!」 “は、はい!” 彼女も上ずった声で答えを返した。再び神姫の腕が自動的に動いてスイッチを操作した。《ガードランザー》のフロントカウルの一部が開いて、オートマティック拳銃とおぼしきモノが姿を現す。 私は《武装神姫》に詳しくは無い。また実際の銃火器に対しても造詣が深いわけでもない。果たしてソレが《怪人》に効くかどうかわからないまま、照準を定めた。 「…なるほど…」 私は納得した。私の視界=《武装神姫》の視界の中には様々なデータが表示されている。その中で《蜘蛛怪人》のデータ表示にはこう、描かれていた。 ―HUMAN(人間)― と。 これでは《武装神姫》を始めとするヒューマノイドロボットたちには手も足も出せないに違いない。《三原則》がある限り、神姫が『人間』と認識するものを倒すことはできないのだ。 「!」 《蜘蛛怪人》の腕にキラリ!と輝くものが見えた。あの毒針だ。今は何とかしての相手の注意を引く事が出来さえすれば良い。別に当たらずとも良いわけだ。 そのように思い定めて私は銃の引き金を引いた。 《武装神姫》のオーナーを狙い定めていた腕を弾かれて、《蜘蛛怪人》は大きく眼を剥いた。 「誰だ!?」 所詮は造りモノに愛情を注ぐような愚かな人間の集団である。自分に反抗する気概のあるものなぞ皆無であるに違いない。そのように考えていたのに次から次からへと余計な真似をする者が現われる。つのる忌々しさを込めて振り向いた視界に新たな人影が映った。 「何だと!?」 こちらを振り返った《蜘蛛怪人》は驚愕しているようだった。 造りモノの顔の表情はあまり動かないが、少なくとも素振りの上ではそう見える。 もっとも、私も驚いている。まさか、始めて扱う銃が見事相手に当たるとは思ってもみなかった。とは言え当たったとは言っても、全くダメージを与えた印象はなかったが。 「誰だ!?貴様はァっ!」 案の定、激怒して相手は問いかけてきた。 「《武装神姫》が俺を狙っただと!馬鹿な!」 やはり、その辺りが相手にとっても驚きどころのようである。三原則に制限されるはずのヒューマノイドロボットから攻撃を受けた事は、それほど思いがけない事なのか。 「さて」 何者か問われれば、答えざるを得ない。 この場合、どのように答えるべきだろうか?そのまま自分の正体を明かしてしまうのは、愚の骨頂である。ここはやはり、自分の正体は秘密にしておくべきだろう。そう、ソレが『正義の味方』の醍醐味である。 一瞬の躊躇の後、そのように考えた私は答えた。 「私の名は、《神姫ガーダー》…《テスタロッサ》!」 《武装神姫》を守る者…すなわち『神姫ガーダー』(ガーター…ではない。念のため)。そして『テスタロッサ』は私が憑依したMMSボディの髪の色からの命名だ。我ながらセンスがないと後に嘆く事になるが、その時はコレが良いように思えたのだ。 そしてこれより後、《武装神姫》を守る者は『神姫ガーダー』と呼ばれる事となる。要するにこの時名乗った私の名前がそのまま使用されることとなったわけだ。 その時より私は『神姫ガーダー一号 テスタロッサ』を名乗ることととなった。 そしてこれは、この後に続く、長く激しい戦いの幕開けでもあった。 「『神姫ガーダー』だと?」 一方、相手は異様なものを見る眼で私を眺めた。まあ、ソレも仕方が無い。 突然現われた《武装神姫》(にしか見えないもの)がヒーロー然とした名乗りを上げたのだ。胡散臭く思うのも理解できる。 「まさか、お前も俺と同じ…?」 とは言え、相手の行動目的はシンプルなものである。すなわち《武装神姫》を害する事唯一つ。そのことに立ち返れば、こちらの事を詮索する意味合いなどないことは明らかだろう。 「そうか!貴様、その《武装神姫》に憑依しているな!」 案の定、件の《蜘蛛怪人》は私を一番の脅威として、攻撃目標と定めたようだ。改めてこちらに向き直り、腕を持ち上げた。 ―毒針を仕込んだ、腕を。 「…さて、どうやって戦うのかね?」 私は己の中に呼びかけた。体内に潜む、本来の《武装神姫》人格である《真珠》嬢にだ。 「むろん、あの対《怪人》用の武装があるのだろうね?」 “はい” 《真珠》の答えは簡潔だった。 “今乗っている、《ガードランザー》自体が一種の武装ユニットとなっています” 「…なるほど」 腕を振り上げたまま、こちらに向かってくる《蜘蛛怪人》を見つつ私はあいづちを打った。 「それで、武装ユニットの装備方法は?」 《蜘蛛怪人》の口腔に当たる部分から粘着糸が放たれ、拘束しようと私に迫った。《ガードランザー》を加速して回避した私に《真珠》は告げた。 “キーワードを、『変身』のキーワードを唱えて下さい” 「了解した」 私は首を傾けて、後方より射出された《毒針》を避けると一言呟いた。 「変身!」 《ガードランザー》はソレ自体が武装ユニットとなっている。言うなれば日本国陸軍の汎用外装歩兵の《武装神姫》版だ。 まず、MMSボディの腰の部分にベルト状の固定具が装着された。これを基点として《ガードランザー》のボディが中折れ式に変形し、胸部と背面から挟み込む形となった。フレームの一部と装甲が四肢を包み、前後輪が背後へと回り組む。 以上の動作で《ガードランザー》は私専用の武装ユニットとなる。その姿は全体にずんぐりむっくりとしたデザインの、重火器で固めたパワードスーツである。 《神姫ガーダー テスタロッサ ランザーフォーム》 ソレが私の『変身』した姿だった。 『変身』した私は迫る《蜘蛛怪人》に両腕を持ち上げた。その掌の中には先ほどの小銃よりさらに大型の銃が握られていた。 《カロッテTMP》…兎型MMS《ヴェッファバニー》装備のサブマシンガンだそうである。軽量化のためか、スコープをオミットされたソレの引き金を私は引いた。 次の瞬間、鈍い振動とともに並べられた銃口から火箭が飛んだ。小口径の銃弾が《蜘蛛怪人》の身体に着弾する。 「効かん!効かんぞこんなモノ!」 だが、驚くべきことに己に当たった銃弾を《蜘蛛怪人》は身体を揺すって振り払った。笑いながらこちらを見、一旦停めた足を踏み込む。 「ふむ」 私は鼻を鳴らし、《真珠》に問うた。 「全く効かないようだが?これで対《怪人》用武装なのかね?」 “そ、そんな!” それに対して、新菜嬢の狼狽した声が返ってきた。どうやらこちらの様子をモニターしていたらしい。 “《怪人》の装甲厚についてはわかっているはずです!効果の無い武器を、《神姫BMA》が用意するはずがありません!” だが現実問題として、《怪人》にダメージを与えた様子は無い。私は武装ユニットの大腿部に内蔵されていた大口径砲―《犬型MMS ハウリン》装備の蓬莱一式を短銃身に切り詰めたもの―を取り出し放った。犬用骨型ガムをコピー拡大したような蓬莱改はさすがに大口径砲だけあって、相手は体勢を崩したがそれも一瞬だけだった。相手は再び立ち上がり、対したダメージの様子も無くこちらへ向かってくる。 「ち!」 私は舌打ちして背後へと飛んだ。だがすでに遅く相手のかぎ爪が胸部装甲へ食い込んだ。鼓膜が張り裂けそうな甲高い破砕音が鳴り響く。 直線的に逃げることは止し、円を描くように飛んだことが幸いしたのだろう。食い込んだかぎ爪は離れて私は解放された。とは言え無傷とはいかず、胸部装甲自体が剥がれ飛んでしまった。 「く!ははは!どうやって俺を倒すつもりだ!?そんな豆鉄砲では俺は倒せんぞ!」 《蜘蛛怪人》の哄笑が私の耳を打った。私はソレに答えることはせず、さらに後方へ飛び去りながら蓬莱改を打った。短銃身ゆえろくに真っ直ぐに飛びそうに無いが、さすがにこの距離では狙い通りのところに当たった。 装甲が最も薄く、情報処理機構が最も集中しているだろう頭部へと―。 「む!?」 だが爆炎がおさまった後、そこに立っていた《蜘蛛怪人》は全く無傷だった。わずかに砲弾の痕が残る頭部を撫で、ニタリと笑みを浮かべる。 「今のは一瞬、痛かったぞ。だが、それで終わりのようだな」 一方、私は今見た光景を反芻していた。着弾の寸前、頭部表面に生えた獣毛が発光していたようだった。全身にびっしりと生えた毛は単なる飾りではなく、どうやら攻撃を無効化する機能を有しているようだ。おそらく獣毛自体が何らかの力場を放つ役割を果たしているらしい。そのように考えた、私は一つの結論を下した。 「つまり、外部からの打撃では破壊不可能というわけですか…」 要は《怪人》には銃器は効かないということだ。まして機敏な動作すらままならない重武装ユニットでは万に一つの勝ち目もないだろう。 …相手は私を上回る絶対的防御力と機敏性を兼ね備えているのだから。 「仕方がありませんね」 《蜘蛛怪人》から逃げ回りながら、私は一つの結論を導き出した。 「しょせん、使い物にならない道具ならば…」 《蜘蛛怪人》は粘着糸と針を織り交ぜた攻撃を放ってきた。どうやら、私を一撃で破壊するような飛び道具は装備していないようだ。とは言え、時折かすめる針は武装ユニットの装甲を確実に削っていた。 「そんな道具はもう、必要ありません!」 “あの、何をするつもりですか!?” 私は意を決して、踏み出す足に力を込めた。それまでノロノロだった動きがスムーズに変わる。途端、私をかすめていた攻撃は遠のいていった。 上から見れば、複数の円を描くような回避パターンを私がとっているのが確認できたはずだ。そう、まるでフラクタル図形のように大小の円弧が枝分かれしながら伸びてゆく曲線コースだ。これを平面上から見れば、一見ランダムな動きで私が左右に行ったり来たりしているように見えるはずだ。微妙に照準が外され、《蜘蛛怪人》は私を追い切れなくなっているのだ。 「く、糞!」 突然自分の攻撃が当たらなくなり、《蜘蛛怪人》は焦慮の声を上げた。もはやその態度に先ほど迄の余裕は感じられなくなってきている。 「いつまでも!ちょこまかと逃げてばかりしおって!」 舌打ち?をする相手の姿を視界の隅に留めながら、私は《真珠》に声をかけた。 「私のお願いを、聞いていただけますか?」 “は、はい!” 《蜘蛛怪人》は標的が動かなくなっていることに気付いた。 先ほどまでうろちょろしていた相手だ。どれほど狙おうとかわし続けた相手が、今はまるで狙ってくれとばかりにつっ立っている。 「はははは!とうとうあきらめたか?」 哄笑し、とどめの攻撃を放とうとした瞬間だった。突然、相手の姿に異常が生じた。 まず、全身に施された武装が排除されていった。大口径砲からサブマシンガン、ハンドガンの類まで、さらにミサイルランチャーなどの銃火器のいっさいがっさいが接続部分から外され、四方八方へ散っていった。 火器が完全に排除されてしまうと、後は重装甲のパワードユニットだけが残る。ずんぐりむっくりとした、軽戦車の趣のある装甲板が今度はまるでたまねぎの皮を剥くみたいにバラバラに外されていった。辺りには細かな部品となった火器と装甲の山が築かれてゆく。 やがてソレも止み、後には無駄な武器や装甲をそぎ落とした精悍そのものの姿が立っていた。 《武装神姫》中枢たる頭部ユニット及びCSCを収める胸部のみが装甲で覆われ、ソレ以外の部分は動きを極小妨げないよう、極薄のメタル‐ナノスキンスーツで包まれている。ひじやひざ、肩の一部は衝撃吸収性のパッドで保護されており、遠目から見るとマッシブな印象を見る者に与えた。頭部ユニット前面には周囲360度の情報を集約する複眼タイプの多機能統合センサーが搭載されており、そのせいで全体の印象はヒト型の昆虫が直立しているような趣すら感じた。 ややもすれば簡素にすら見える強化外骨格姿の相手は、緩やかな動作で《蜘蛛怪人》に向き直った。一歩前へと脚を踏み出し、身構える素振りを見せる。 「下らん!そんなこけおどしが俺に通用するか!」 《蜘蛛怪人》の背中が膨れ上がった。盛り上がった皮膚が破れて、中から長大な腕が現われる。右に2本、左に2本。元々の手足も加えると計8本の四肢を持つその姿はまさに巨大蜘蛛だった。 「“こいつ”を避ける事ができるか!?」 増えた腕のそれぞれに毒針、粘着糸の射出口が現われた。計6ヶ所のソレを己と同じ-人間の魂が憑依したMMS素体-へと向け一斉に放つ。 だが次の瞬間、《蜘蛛怪人》の目の前からソノ《武装神姫》の姿は消失した。 “これで、よろしかったのでしょうか?” 私の指示を実行に移した《真珠》は不安そうに尋ねた。 無理も無い。武装を完全放棄し、防御のための装甲すらほとんど捨て去った私の身体を守るものはないに等しい。かろうじて中枢部分のみ防具で覆われているが、それすらあってなきがごときである。 「ふむ」 試しに、私は腕を動かしてみた。 軽い。先ほどまで感じていた違和感が完全に払しょくされている。分厚いアーマーに覆われた状態では腕一本動かそうとしても、動作が遅れて伝わるような掻痒感があったが今は完全に拭いさられている。普通通りに生身で動いている、そんな感覚だった。 この状況ならば、私の思うどおりの動作ができるはずだ。 そのようにうなづき、次の行動に移ろうとした私を《真珠》の声が打った。 “来ました!” 視線を向ければ、何本も腕を生やした《蜘蛛怪人》が攻撃を放とうとしているのが見えた。 「《真珠》、ホイールユニットを駆動!」 私の指示に従い、背中にマウントされていた二輪=バイク時の車輪が降着した。ホイール内に内蔵されていたモーターが駆動を開始し、私の身体を後方へと導く。 最前まで私が立っていた場所に、何十本もの毒針と粘着糸が襲うのが見えた。肝心の《蜘蛛怪人》は急に機動性を増した私の方を、呆気に取られた様子で見送っていた。 「それでは、反撃させていただきますか」 もはや攻撃は当たらない。超軽量、超高機動の新たな姿に生まれ変わった《テスタロッサ》を、私は《蜘蛛怪人》の方へと向けた。 大量の毒針と粘着糸を避けながら、私は《蜘蛛怪人》へと近づいていった。接近するのは先ほどと同様、複数の円弧を組み合わせた流れるような曲線コースだ。 私はソレを、学生時代に学んだ。 まだ自分が何者やも知れぬ、過去と現在(いま)と未来を天秤にかけて暗中模索する戸惑い多き日々。 ただただ己の内の力をもてあまし、持て余しつつも過ぎ行く無為なる日常。 そんな最中に、私は一人の人物と出会った。 “この世は《螺旋》で成り立っている” 浮浪者めいたソノ男は、私に謎めいた言葉を告げた。 “万物=無窮たる大宇宙から微細たる素粒子まで全てが、実は《螺旋》なのだ” そして、奇妙な構えと息吹の仕方を私に伝授した。 “ならば、《螺旋》を極めれば、ヒトは原子構造から宇宙の運行まで、全てを己のモノとすることが可能となるだろう” 初めのうちは戸惑いがあった。太極拳めいた動きと相反する鋭い拳、単なる精神修養とは異なる闘気むき出しの技の応酬の果て、見えてくる真なる境地。 《螺鈿流真弧拳(らでんりゅうしんこけん)》 ソレが、私が修めた技の名称だ。 複数の円弧を描きながら進む歩み脚―螺鈿流の歩法だ―を繰り出しながら、私の体内に《螺旋》が満ちるのを待つ。ヒトの身体の65%は水分であり、《螺旋》の波動はその水分子間に蓄積することが可能だ。波動=生体エネルギーの高まりは私自身の細胞を活性化させ、爆発的にブーストさせる。 すなわち、《感覚疾走(アクセル)》。 無論、今現在私が憑依しているのは借り物の身体である。だが普段と変わらぬ歩法、普段と変わらぬ構えを取ることで、私は普段と変わらぬ《螺旋》を扱う事ができた。 おそらく、《武装神姫》の体構造が人間に似ているせいだろう。 セラミックの骨格は人間のソレの縮小版である。さらにそれを人間と全く同じ配置で人工筋肉が取り巻いている。《武装神姫》の神経系たる光ケーブルもまた然り。 全ては、《武装神姫》を限りなく人体に近づけようとした先人たちのおかげだった。 今の私には、《蜘蛛怪人》の放った攻撃が、全てノロノロと遅くなって見える。コレは私の感覚がブーストしたためであり、それにより体内の時間感覚が変化したためである。 ほぼ空中に停滞した毒針の中を私はかいくぐる様に進んでいった。掌底を突き出して巻き起こした風で粘着糸を払い、逆に《蜘蛛怪人》へ向かって突き返す。 《蜘蛛怪人》の至近に到着して、私は脚を停めた。途端、疾走する感覚は失われ、通常の時間感覚に戻る。 「な、馬鹿な!」 いきなり眼前に現われた私の姿に、《蜘蛛怪人》は目を見開いた。慌てて複数の腕を操り、私を押しのけようとする。 だがその腕に白いものが絡み付き、相手の動きを拘束した。むろん、ソレは私に突き返された粘着糸である。 「糞!」 憤然とののしる相手を目の前に、私は大きく息を吸い、吐き出した。 「ひゅおおおおおおおっっ!」 笛のような、あるいは嵐の夜のような残響が大気を震わせる。同時に体内の《螺旋》がいっせいに駆動、収束して一点へと放出される。 すなわち、《蜘蛛怪人》の胸部へと添えた私の右掌へと―。 案の定、《蜘蛛怪人》の表皮でバチリ!と閃光がきらめいた。何らかの力場を形成し、体外に展開する事で衝撃より己を守るシステムの発動だ。 だが私が練り上げた《螺旋》はソレすら飛び越え、内部へと浸透してゆく。 「おのれっ!」 巻き付いた粘着糸の拘束からようやく逃れた《蜘蛛怪人》は、私に対し腕を振るった。風を斬る、と言うより引き裂く音が迫った。私は先ほどと同じく背中の両輪を降着させ、高速移動する。 逃れた私を睨み、《蜘蛛怪人》が吠えた。 「効かん!効かんんぞぉっ!そんなナマっちょろい拳はァ!」 だが私はやや離れたところに停止すると、静かに首を振った。 「もう、全て済みましたよ」 「な、に?」 「あなたはもう、動く事はできない」 「何を言って…」 冷ややかな私の言葉にせせら笑いながら、己の腕を持ち上げようとした《蜘蛛怪人》は―。 「これはっ!」 獣毛に包まれた《蜘蛛怪人》の胸部。今しがた私が掌底を打ち込んだ箇所が、奇妙なぜん動を行なっていた。まるで別の生き物が潜むみたいに不気味に蠢いている。 ユルリ、ユルリと螺旋状に回転するその動きは、時間が経つほどに激しさを増して行き―。 「ぐ、ぼあっ!」 《螺旋》が《蜘蛛怪人》の全身を駆け巡った。 それはまるで、小型の竜巻が体内で吹き荒れたようだった。 人工筋肉が破裂し、血管のように張り巡らされたエネルギー供給管が寸断された。セラミックとメタルスチールの骨格がよじれ、歪み分解されてゆく。 ガラン!ガラン!という割れ鐘のような大音響を立てて、《蜘蛛怪人》の身体が分解してゆく。私が見ている前で屈強な体躯を誇った《蜘蛛怪人》は残骸と化していった。 「おやおや、これは?」 獣毛に覆われた丸いものが私の足元まで転がってきた。まっ赤な八つの眼を瞬かせたソレは、《蜘蛛怪人》の頭部だった。 「な、なんだ?これはァ!」 先に首のジョイントが破壊されたためだろう。かろうじて原型を保った頭部が私をねめつけた。 「お前は、いったい、何モノだァ?」 「私ですか?」 私は穏やかに答えた。頭部だけとなった怪人に歩み寄り、ゆっくりと脚を持ち上げる。 「私はただの―“人間”ですよ」 頭頂部に足底を載せて、相手の顔を覗き込む。 そんなわたしに《蜘蛛怪人》―と言うか《蜘蛛怪人》のMMSに憑依した人間は慌てた風に話し掛けた。 「人間、ならばなぜ《神姫》どもに加担する!あいつらは―!」 きっと“本体”の人間は血走った眼で説得を試みようとしているに違いない。そんなふうに思わせる、鬼気迫った様子で相手は言葉を続けた。 「あいつらは、存在してはならないバグなのだ!」 「そうですか」 ソレに対する私の返事はにべもない。 「放っておけば、あいつらは人類にとって替わる!そうなる前に一体でも多く…」 「黙って下さい」 べらべらとなおも喋るのを止めようとしない《蜘蛛怪人》の口を私は制した。 「貴方の思想内容などどうでも良いのですよ。ナニを考えようとかまいません。ただ―」 私は脚に込めた力を増した。蜘蛛を模した、作り物の頭部がミシミシきしむ音を立てて歪んでゆく。 「ソレが、他人のものに手を出して、傷つけて良い理由にはなりませんよ」 「ギャブッ!」 言い終わるや否や、私は脚を踏み降ろした。ダン!という大音響が鳴り響き、《蜘蛛怪人》の頭部が破壊された。粉々にされた部品が辺りに飛び散る。 「ふう」 ため息混じりに辺りを見回す。既に粘着糸や針で拘束されていた《武装神姫》は救出され、この場から逃げ延びたようだ。毒針にやられたガードマンの中にも、幸い致死に至ったものはわずかなようだ。 “どうやら終わりましたね” 新菜嬢の声が響いた。 “《デバッガーの怪人》の本体は回収しました” どうやら別働隊が《蜘蛛怪人》に憑依していた相手の所在を突き止めたらしい。私が用いたのと同じシステム内でのた打ち回っていたのを拘束されたとのことだ。 “意識が戻り次第、事情聴取をするつもりですが” ややあって、ため息混じりの言葉が続く。 “果たして正気に戻るかどうか” 「…」 改めて、私が今用いているシステムがいかに危険かを思い知らされた。 “私たちもここから撤退しましょう。今のところ…《神姫ガーダー》は機密事項ですので” 「了解しました。ところで、ずいぶん装備を飛び散らせてしまったのだが?回収はそちらのスタッフにまかせてかまわないでしょうか?」 重装備タイプから軽装型に分離した時、飛び散った武器や装甲のことを思い出す。わたしがその事を言うと、新菜嬢は《怪人》のボディーを回収する際に一緒に始末すると答えた。 「ならば問題ありませんね。ここを去らせて貰う事としましょう」 言うや、私は強化外骨格を分離させた。前後輪が展開し、バイクの形状へと戻る。ここへ来る前は大型ツアラーのようだったバイクは、重装備を取り外した今モトクロッサーのような外観に変わっている。 私はソレに乗り込み、モーターを始動させた。アリーナの向こう側の《ガードキャリー》は新菜嬢が動かすようだ。《神姫》比率で小山のような巨大な車体はかすかに身震いし、もと来た道を戻っていった。ソレを追い、私は《ガードランザー》を発進させた。 “あ、あの!” バイクを走らせて行くと、再び己の身の内から声が聞こえてきた。 「どうしたのかね?」 《私》の中にいる神姫《真珠》はためらいつつも話を続けた。 “まだ、貴方を何と呼んで良いのか、決定しておりません。ですから” 「なるほど、私に対する君の呼び方か。まだ、決めていなかったかね?ならば…」 しばらく考え、私は答えた。 「ならば、《オーナー》と呼びたまえ」 こうして、私と《真珠》の闘いの日々は切って落とされた。 同時にソレは、《武装神姫》の真実に迫る驚異の道のりでもあった。 《神姫》を『バグ』として破壊する《デバッガー》の真の目的。 闘いの果てにナニが待ち受けているのか?そのときの私には分からなかった。 《神姫ガーダー》は《武装神姫BMA》のエージェントである! 《デバッガー》は《神姫》の安全を脅かす悪の組織である! 《神姫ガーダー》は《神姫》の平和と安全を守るため、日夜《デバッガー》と戦い続けるのだ! 《神姫ガーダー テスタロッサ》 エピソード① 『神姫ガーダー誕生!』 おわり
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/389.html
先頭ページへ 次へ BGM:零のテーマ~雑踏の中で~(戦闘妖精雪風・オリジナルサウンドトラック1より) 事前予告 2036年某月某日 2001時 更新を確認 今月末の休日に開催される特別イベント試合の概要が、公式サイト「神姫NET」にて公開された。 開催期間:*月*日(土)1200時~1930時 7時間半(休憩時間含む) 会場:神姫NET内特設バーチャルフィールド(サーバーごとに分割されます) 参加資格:恒常的に飛行可能な武装 その他使用パーツは公認ルール準拠、一部自由 事前審査あり 参加申込:事前申込が必要 アクセス:各神姫センター、ショップなどに特設されたアクセススペースから、神姫NET内特設バーチャルフィールドにアクセス 試合概要: 特設バーチャルフィールドにおいて、レッドチームとブルーチームに分かれての大規模空戦。 参加上限人数はなし。サーバー選択、チーム選択はコンピュータがオートで決定。 全5ラウンド。1ラウンド1時間。開始前30分のブリーフィングタイムを兼ねた休憩時間を設ける。 ブリーフィングタイム中は自由。但し試合開始五分前に出撃準備を完了しておくこと。 5ラウンド中の各チームの撃墜数、サポート等で得られる貢献ポイント、その他ラウンド内イベントの勝敗など各種判断材料をを総合して勝利チームを決定する。 1ラウンドごとにも途中戦況判定を行い、優勢チーム参加神姫にはそのつどランクポイントを進呈。さらにラウンドごとに各チームからMVP神姫を選出しさらにランクポイントを進呈。 戦況判定はサーバーごとにジャッジAI5セットが行う。 優勝チーム参加者には副賞として特別パーツを授与。 その他詳細はブリーフィングタイム中に参加者にのみ公開。 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2714.html
7月25日(月) その翌日、つまり月曜日。私はまたもや炎天下の元に歩いていた。 今日は神姫センターに行って、マスター登録をするそうだ。そうすることで公式大会にも出られるらしい。出る気はないんだけど。 「いいじゃん、無料だし色々特典ついてくるし」 「でも暑い」 「仕方ないでしょ。仁さんはお店あるんだし」 定休日とか言ってなかったっけ? 「樹羽はちょっと外に出て散歩した方がいいんじゃない?」 肩掛け鞄の中から、シリアがひょっこり顔を出す。 「シリアまで華凛の味方だ」 「私は樹羽のためを思って言ってるんだよ」 それくらいわかっている。が、やっばり不思議だな、神姫って。 その時、華凛がこちらを見て笑っていることに気が付いた。 「不思議でしょ、神姫って」 「……うん」 「??」 シリアは何のことかわからずキョトンとしている。 神姫は小さな人。見た目は人形そのものだけど、ちゃんと人の「心」を持っている。後8年早く神姫に触れていたら、私はあの時、笑っていられただろう。 「シリア、ありがとね」 「?? どういたしまして……」 やって来たのは駅前だった。ビルには「武装神姫」と書かれた垂れ幕がかかっており、さらに武装したアーンヴァルmk,2の写真や、TVにも神姫についての特集をやっている。 「ここまで人気だったんだ」 「元々2031年の発売から人気だったし、4年前の神姫ライドシステムの開発に3年前の大会ラッシュでさらに人気が高まったのよ」 3年前は神姫を使った事件とかもあったんだけどね、と華凛は付け足した。 「ま、今はそんなことも無くなって、みんな安心して神姫と一緒にいられるんだけどね」 「安心」 最近の世の中に関して、私はよく知らない。テレビはあまり見ないし、新聞(今時紙性の新聞をとっている家は割と珍しい)だって見ない。 「神姫を悪いことに使う、か」 鞄の中で、シリアは小さく呟いた。 3年前の事件、神姫は物として扱われたに違いない。それは、神姫のことなど考えていないと言うことだ。 それはシリアにも共通している。シリアはそれを思っているのだろう。 「今は安心」 「うん、そうだね」 私が言うと、シリアは笑ってくれた。でも、その笑いはどこか悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。 「ほら樹羽、ここだよ」 華凛が指差す先、そこには一際大きなビルが建っていた。大きく「神姫センター」と書かれている。 なんか、今から不安になってきた。 建物の中は、人で賑わっていた。みんな神姫と一緒にいるか、中には買ったばかりの神姫を紙袋に入れている人もいる。 あの猫みたいな神姫は、マオチャオ型だ。思えばあの日、ゲームセンターで神姫バトルを見たことから始まったような気がする。 「まずカウンターに行ってカード作ってもらわないとね」 「……うん」 私は華凛の手を握った。人込みはそれほどではないが、はぐれたら嫌だ。華凛もそれをわかってくれたのか、無言で手を握り返してくれた。そのまま進んで行く。 「え~と、確か3番だったかな……?」 華凛の背は私より高い。よって手を引かれた状態だと、華凛がどこへ向かっているのかイマイチよく分からない。 「あ、いたいた!」 華凛の歩く速度が上がる。どうやら目的の場所を見つけたらしい。視界が軽く開ける。白いカウンターが目に写った。 「いらっしゃいませ、神姫センターへようこそ!」 その緩やかなソプラノに、私は懐かしさを覚えた。思わず顔をあげる。 「長谷川……さん?」 「あ、覚えててくれたんだ。お久しぶりね、奏萩さん」 そう言って微笑んでいるのは、私の中学生の時のクラスメイト、長谷川碧(はせがわみどり)だった。 わずかにウェーブのかかった薄緑色の髪に、きっちりとした制服。未だにあどけなさが残る顔立ちはだいぶ大人びた感じがする。 「何で長谷川さんがここに?」 「そりゃ、私がここで働いてるからよ」 それはそうだろう。でなかったらカウンターの向こう側で制服を着ているわけがない。 「私に自ら話しかけてくるとは、華凛にしかなついてなかった子がねぇ……」 「話しやすくなった?」 「そうそう、なんか空気って言うかオーラみたいな物が変わった気がするわ」 華凛と長谷川さんが笑い合う。 変わった――私は変わったのだろうか? だとすれば、その要因はやはりシリアとの出会いだったんだろう。 「で、今日は何の用? 昔話しに来た訳じゃないんでしょう?」 「ああそうだった。碧、樹羽に神姫カード作ってくれない?」 華凛がそう言うと、長谷川さんは一回微笑んでから、 「では、新しく神姫カードをお作りいたします」 すっかり様になった受付嬢になった。 「まず、お客様の名前や生年月日など、こちらのタブレットにご記入下さい」 渡されたのは、B5サイズのタブレットとタッチペン。赤い縁で囲われた部分を書けばいいらしい。自分の携帯の番号など覚えてなかったが、すかさず華凛が教えてくれた。 最後に、自分が持っている神姫とその名前を記入する。 「ありがとうございます。少々お待ちください」 長谷川さんはタブレットを受け取ると、慣れた手付きでタブレットを操作した。カウンターの向こうのパソコンと一緒に動かしていく。 やがて全ての作業が終わると、長谷川さんは一枚のカードを出した。銀色のカードで、エウクランテのシルエットと「武装神姫」と言う文字がプリントされている。 「お待たせ致しました。こちらがお客様のカードになります」 カードを受け取る。裏面には、細かい文字で注意書きがビッシリと書いてあった。ま、進んで読もうとは思わない。 「なお、お客様のランクは3からとなっております」 「ランク?」 ランクとは何だろう。3とは高いのだろうか? 「ランクって言うのは、まあ武装制限みたいなものね。このランクの登場で、初心者でも金を積めば勝てるって風潮が無くなったの。後、その人がどれぐらい強いのか、だいたいの目あすかな?」 「へぇ……」 確かに一里あるが、やっぱり武器が強くても使う人が駄目では宝の持ち腐れではないだろうか? だとすれば、このランクという制度が出来る前も、金を積んで勝てたのは初級から中級の人までだっただろう。つまり、真に強い人にはあまり意味のない制度なのかもしれない。 まあそれはそれとして、 「何で3から?」 シリアが疑問の声をあげる。普通ランクは1からではないのだろうか? 「あ、あなたが奏萩さんの神姫? シリアっていうんだよね」 「あ、はいそうです。よろしくお願いします、長谷川さん」 「やっぱえうえうはマジメよねぇ、ウチとはおお違い」 「ウチ?」 「私もオーナーだからね。後、そのランクは私からのプレゼント」 「長谷川さんからの?」 「強いんでしょ? 奏萩さん」 後ろで華凛がニヤニヤしている。絶対華凛の差し金だ。 「まあいいじゃない、ランク3からなら、公式でも今まで通り純正装備で戦えるんだから」 「そうなの?」 「そうなの。あと、ヴァーチャルバトルでは、武装データで武装するのは知ってるでしょ? その武装にはポイントがあるの。ランクが上がると、装備出来る武装の種類だけじゃなくて、武装が装備出来るキャパシティも増えていくのよ」 つまり、神姫には790や530と言ったようにキャパシティが設けられており、そのキャパシティ以内で武装をやりくりしなければならないらしい。 「めんどう……」 「そこが楽しいんじゃない。オリジナルの武装パターンを作りだすのよ!」 カードゲームに近いものがある気がする。余談だが、最近新しい決闘板がKCから発売されるとかビルの広告に書いてあった。 と、その時だった。 「う~うっさいじゃん。人が静かにロックを聞いてる上でごちゃごちゃ喋らないで欲しいじゃん」 カウンターの下から神姫が顔だけ出した。シンバルみたいな物(むしろシンバルそのもの)が頭に付いているその神姫は、確かベイビーラズ型だったはずだ。 「ちょっとグリーン、今接客中……」 「マスターが楽しくお喋り出来てるなら問題ないじゃん。マスターの友達ってことじゃん?」 独特な語尾で喋るグリーンと呼ばれた神姫は、こちらを――正確にはシリアを見た。 「私はグリーンって言うじゃん! よろしくじゃん!」 「よろしく」 「あ、よ、よろしくお願いします」 シリアは突然のハイテンションについていけていない様子。 「かー! 噂には聞いてたけどやっぱエウクランテはマジメじゃん! もっと羽目を外すくらいでちょうどいいじゃん?」 「は、はぁ……」 なんと言うか、元気な子だった。ある意味シリアとは対称的な感じ。 「碧も神姫持ってたんだ」 「うん、この仕事してるとさ、自然と惹かれるものがあって、つい……」 「なんの予備知識もなく買ってしまったと?」 「うん。元気なのはいいんだけど、家で留守番させるとすねるし、かと言ってこっちも接客業だから……」 なるほど、つまりカウンターの下でロックを聞いてて貰うので妥協してもらったのか。 そのグリーンは、今シリアと話している。思えば、シリアも私同様交友関係は少ないはずだ。これは交友関係を築くいい機会かもしれない。 「…………」 ふと見ると、華凛がグリーンのことをじっと見ていた。 「どうしたの?」 「あ、ううん! なんでもない」 華凛はまた長谷川と話し始めた。 (華凛?) さっきまでの華凛の表情は、まるで無くしてしまった何かを想っているような、そんな顔だった。 「明日はバトルしに行きましょう」 帰り道、華凛はそう宣言した。 「明日、月曜日」 「夏休み」 そう言えばもうそんな時期である。 「ゲームセンター行ってさ、バトルしに行こうよ!」 「…………」 正直、乗り気ではない。バトル事態が嫌な訳ではないが、初対面の人とバトルするのは、まだ抵抗がある。 「いいですね、行きましょう」 「シリア……」 シリアは鞄の中から手を上げた。神姫はやる気があるらしい。 つまり後は私次第。 「……わかった」 「よし、決まり! じゃあまた明日ね! 迎えに行くから、ちゃんと服着て寝ててよ! あられもない姿晒してたら問答無用で襲うからね!」 華凛は早口で巻くし立て、自らの帰路についた。 「……帰ろっか」 「うん、そうだね」 私たちも、帰り道を歩きだした。 夕日がコンクリートの地面を紅く染める頃、私は翌日の来訪を僅かながらに楽しみにしていた。 第五話の1へ 第六話の1へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/6.html
素体性能について N R SR UR 得意・不得意武器 ダメージ特性 素体性能について 以下の表の数値は神姫の素体性能の表である。 (素体状態で装備している「バトルスキン」にも能力があるため,基礎ステータスとは異なる) 実際には下記の値に、カード記載のマークに応じた個体値が加算される。 N 神姫 ATK DEF SPD LP BST アーンヴァルMk.2 19 40 345 1350 441 ストラーフMk.2 76 65 325 1350 441 ツガル 19 45 335 1350 441 ジルダリア 41 30 335 1350 491 ジュビジー 26 80 325 1350 491 エウクランテ 33 30 345 1350 441 イーアネイラ 33 30 335 1350 441 シュメッターリング 19 30 325 1350 641 ブライトフェザー 32 30 325 1650 441 ハーモニーグレイス 26 60 325 1350 441 ガブリーヌ 62 50 330 1350 441 蓮華 46 30 345 1350 471 ラプティアス 26 35 325 1370 441 アーティル 75 35 325 1350 441 エーデルワイス 33 30 340 1350 441 サイフォス 36 40 335 1440 441 紅緒 36 45 330 1400 451 ヴァッフェドルフィン 61 60 325 1450 541 ヴァッフェバニー 61 30 335 1500 471 ウェルクストラ ヴァローナ アルトレーネ アルトアイネス R 神姫 ATK DEF SPD LP BST アーンヴァルMk.2 24 45 355 1400 461 ストラーフMk.2 81 70 335 1400 461 ツガル 24 50 345 1400 461 ジルダリア 46 35 345 1400 511 ジュビジー 31 85 335 1400 511 エウクランテ 38 35 355 1400 461 イーアネイラ 39 35 345 1400 461 シュメッターリング 24 35 335 1400 661 ブライトフェザー 37 35 335 1700 461 ハーモニーグレイス 31 65 335 1400 461 ガブリーヌ 66 55 340 1400 461 蓮華 51 35 355 1400 491 ラプティアス 31 40 335 1420 461 アーティル 79 40 335 1400 461 エーデルワイス 39 35 350 1400 461 サイフォス 41 45 345 1490 461 紅緒 41 50 340 1450 471 ヴァッフェドルフィン 66 65 335 1500 561 ヴァッフェバニー 66 35 345 1550 491 ウェルクストラ ヴァローナ アルトレーネ アルトアイネス SR 神姫 ATK DEF SPD LP BST アーンヴァルMk.2 29 50 365 1450 481 ストラーフMk.2 86 75 345 1450 481 ツガル 29 55 355 1450 481 ジルダリア 51 40 355 1450 531 ジュビジー 36 90 345 1450 531 エウクランテ 43 40 365 1450 481 イーアネイラ 45 40 355 1450 481 シュメッターリング 29 40 345 1450 681 ブライトフェザー 41 40 345 1750 481 ハーモニーグレイス 36 70 345 1450 481 ガブリーヌ 70 60 350 1450 481 蓮華 55 40 365 1450 511 ラプティアス 36 45 345 1470 481 アーティル 36 45 345 1470 481 エーデルワイス 45 40 360 1450 481 サイフォス 46 50 355 1540 481 紅緒 46 60 350 1500 491 ヴァッフェドルフィン 71 70 345 1550 581 ヴァッフェバニー 71 40 355 1600 511 ウェルクストラ ヴァローナ アルトレーネ アルトアイネス UR 神姫 ATK DEF SPD LP BST アーンヴァルMk.2 35 55 375 1500 501 ストラーフMk.2 91 80 355 1500 501 ツガル 35 60 365 1500 501 ジルダリア 56 45 365 1500 551 ジュビジー 41 95 355 1500 551 エウクランテ 62 45 375 1500 501 イーアネイラ 52 45 365 1500 501 シュメッターリング 35 45 355 1500 701 ブライトフェザー 45 45 355 1800 501 ハーモニーグレイス 41 75 355 1500 501 ガブリーヌ 73 65 360 1500 501 蓮華 58 45 375 1500 531 ラプティアス 41 50 355 1520 501 アーティル 85 50 355 1520 501 エーデルワイス 52 45 370 1500 501 サイフォス 51 55 365 1590 501 紅緒 51 60 360 1550 511 ヴァッフェドルフィン 76 75 355 1600 601 ヴァッフェバニー 76 45 365 1650 531 ウェルクストラ ヴァローナ アルトレーネ アルトアイネス 得意・不得意武器 神姫 得意武器 不得意武器 アーンヴァルMk.2 片手斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+30%)双頭刃斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)防具用武器(+30%) 格闘打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%) ストラーフMk.2 片手斬撃武器(+35%)双斬撃武器(+35%)両手斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%) 腰持ちヘビーガン(-30%) ツガル 双斬撃武器(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%)下持ちヘビーガン双斬撃武器(+30%)双ライトガン(+?%) 格闘打撃武器(-30%)両手斬撃武器(-30%)防具用武器(-30%) ジルダリア 防具用武器(+100%) 両手斬撃武器(-30%)両手ライトガン(-30%) ジュビジー 両手打撃武器(+30%)下持ちヘビーガン(+20%) 両手斬撃武器(-30%)防具用武器(-30%) エウクランテ 格闘打撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%) 片手斬撃武器(-30%)両手斬撃武器(-30%) イーアネイラ 回復補助(+50%)両手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+30%)槍斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)防具用武器(+30%) 格闘打撃武器(-30%)片手斬撃武器(-30%) シュメッターリング 回復補助(+60%)片手打撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)防具用武器(+30%) 下持ちヘビーガン(-20%) ブライトフェザー 回復補助(+40%)両手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%)格闘打撃武器(+25%) 片手ライトガン(-30%)双ライトガン(-30%)両手ライトガン(-30%)下持ちヘビーガン(-50%) ハーモニーグレイス 回復補助(+50%)双ライトガン(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%)防具用武器(+30%)片手打撃武器(+25%)両手打撃武器(+25%) 片手斬撃武器(-30%)両手斬撃武器(-30%)双頭刃斬撃(-30%)双斬撃武器(-30%) ガブリーヌ 格闘打撃武器(+35%)片手打撃武器(+35%)片手斬撃武器(+35%)片手ライトガン(+35%)双ライトガン(+35%)槍斬撃武器(+25%) 両手ライトガン(-35%)腰持ちヘビーガン(-35%)下持ちヘビーガン(-35%) 蓮華 格闘打撃武器(+30%)片手斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+25%) 片手ライトガン(+30%)両手ライトガン(+30%) ラプティアス 双斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%) 腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) アーティル 格闘打撃武器(+35%)両手ライトガン(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%) - エーデルワイス 腰持ちヘビーガン(+40%)双斬撃武器(+30%)片手斬撃武器(+25%) 格闘打撃武器(-30%)片手打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) サイフォス 片手打撃武器(+30%)片手斬撃武器(+30%)槍斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+20%) 片手ライトガン(-20%)腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) 紅緒 片手斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)槍斬撃武器(+30%) 投擲武器(-?%)腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) ヴァッフェドルフィン 双斬撃武器(+30%)両手ライトガン(+30%)下持ちヘビーガン(+30%) 両手斬撃武器(-30%)片手打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%) ヴァッフェバニー 双斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)下持ちヘビーガン(+30%)双ライトガン(+20%)両手ライトガン(+20%) 片手斬撃武器(-20%)両手斬撃武器(-20%) ウェルクストラ 片手斬撃武器(+30%)双頭刃斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)両手ライトガン(+30%)防具用武器(+25%) 両手斬撃武器(-30%)片手打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%)腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) ヴァローナ 片手斬撃武器(+30%)下双斬撃武器(+30%)下双頭刃斬撃武器(+30%)下片手ライトガン(+30%)下両手ライトガン(+30%)下防具用武器(+25%) 片手打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%)腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) アルトレーネ 片手斬撃武器(+30%)槍斬撃武器(+30%)双頭刃斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)防具用武器(+25%) 双ライトガン(-20%)両手ライトガン(-20%)下持ちヘビーガン(-20%)片手ライトガン(-30%) アルトアイネス 片手斬撃武器(+30%)槍斬撃武器(+30%)双頭刃斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+25%)両手打撃武器(+25%)防具用武器(+25%) 腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-30%) フォートブラッグ 腰持ちへビーガン(+35%)片手ライトガン(+30%)両手ライトガン(+30%)下手持ちへビーガン(+30%) 投擲武器(-?%)双斬撃武器(-30%)双頭刃斬撃武器(-30%)両手斬撃武器(-30%)防具用武器(-30%)回復補助(-30%)片手斬撃武器(-50%)格闘打撃武器(-50%)片手打撃武器(-50%)両手打撃武器(-50%) ムルメルティア 防具用武器(+50%)格闘打撃武器(+35%)片手ライトガン(+35%)腰持ちヘビーガン(+35%) 片手打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%) 飛鳥 防具用武器(+70%)回復補助(+70%)片手斬撃武器(+30%)槍斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)双ライトガン(+30%)両手斬撃武器(+25%) 格闘打撃武器(-30%)片手打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%) アーク 片手ライトガン(+30%)双斬撃武器(+20%)両手ライトガン(+20%)腰持ちヘビーガン(+20%)下持ちヘビーガン(+20%) 投擲武器(-?%)片手斬撃武器(-20%)両手斬撃武器(-20%) イーダ 両手斬撃武器(+40%)片手打撃武器(+20%)両手打撃武器(+20%)片手ライトガン(+20%) 双ライトガン(-20%)両手ライトガン(-20%)腰持ちヘビーガン(-20%)下持ちヘビーガン(-20%) アーンヴァル 防具用武器(+70%)回復補助(+70%)双斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+20%)両手ライトガン(+20%)下持ちヘビーガン(+20%) 格闘打撃武器(-30%) ストラーフ 片手斬撃武器(+35%)双斬撃武器両手斬撃武器(+35%)片手ライトガン(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%)投擲武器(+30%)防具用武器(+30%)回復補助(+30%) 双頭刃斬撃武器(-30%)両手ライトガン(-30%) フブキ 片手斬撃武器(+30%)投擲(+30%) 双斬撃武器(-30%)両手斬撃武器(-30%)格闘打撃武器(-30%)双頭刃斬撃武器(-30%)片手ライトガン(-30%)腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-70%) ミズキ 投擲(+35%)片手斬撃武器(+30%) 双斬撃武器(-30%)両手斬撃武器(-30%)格闘打撃武器(-30%)双頭刃斬撃武器(-30%)片手ライトガン(-30%)腰持ちヘビーガン(-30%)下持ちヘビーガン(-70%) アーンヴァルMk.2テンペスタ 防具用武器(+40%)回復補助(+40%)片手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)双頭刃斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)双ライトガン(+30%)肩持ちヘビーガン(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%)下手持ちへビーガン(+30%) 格闘打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%) ストラーフMk.2ラヴィーナ 防具用武器(+40%)回復補助(+40%)片手斬撃武器(+30%)双斬撃武器(+30%)両手斬撃武器(+30%)片手ライトガン(+30%)腰持ちヘビーガン(+30%)投擲武器(+30%) 双頭刃斬撃武器(-30%)両手ライトガン(-30%)肩持ちヘビーガン(-30%) ベイビーラズ 両手斬撃武器(+30%)下手持ちへビーガン(+30%)回復・支援(+30%)双斬撃武器(+25%) 片手打撃武器(-30%)格闘打撃武器(-30%)両手打撃武器(-30%) ダメージ特性 2021/6/28に神姫ごとに近接、射撃攻撃に対する特性が追加された。 ダメージの増減量は神姫ごとに上下する。 また耐性を持ってる神姫の防具にも、微量ながら耐性がついている。 (物によって特効がついてしまうかは不明) 特性なし ジルダリア、ジュビジー、ヴァッフェドルフィン、ブライトフェザー アーンヴァルMk.2、ストラーフMk.2、ラプティアス、アーティル、エーデルワイス 近接耐性 サイフォス、フォートブラッグ、ムルメルティア、ウェルクストラ、蓮華 ハーモニーグレイス 射撃耐性 紅緒、ツガル、エウクランテ、イーアネイラ、シュメッターリング、ヴァローナ ガブリーヌ 近接特効 ヴァッフェバニー 射撃特効 アルトレーネ、アルトアイネス /*コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/371.html
武装神姫・標準装備一覧 ※設定は非公式のものです。また、強制されるものでもありません。 ※作品内における武装構成にお役立てください。 『フブキ』【面隠し“闇狐”】 【忍装束“紫苑”】 【忍草摺“紫蘭”】 【忍大袖“紫木蓮”】 【忍篭手“紫式部”】 【忍脚絆”紫鳳”】 『アーンヴァル』【ランディングギアAT3】 【リアウイングAAU7】 【ヘッドセンサー・アネーロ】 【buAM_FL012 胸部アーマー】 【exSLD_FL012 ガードシールド】 【exAM_FL012 増設アーマー】 【エクステンドブースター】 『ストラーフ』【GA2“サバーカ”レッグパーツ】 【GA4“チーグル”アームパーツ】 【DTリアユニットplus + GA4アーム】 【buAM_FL013 胸部アーマー】 【exSLD_FL013 ガードシールド】 【exAM_FL013 01スパイクアーマー】 【exAM_FL013 02スパイクアーマー】 【exOPT_FL013 ツインテール】 『ヴァッフェバニー』【WFブーツ・タイプ・クレイグ】 【リアブースターJRv21】 【KO-204スコープ】 【buAM_VLBNY1 胸部アーマー】 【exAM_VLBNY1 腕部アーマー】 【exAM_VLBNY1 脚部アーマー】 【exOPT_VLBNY1 増設ラジエーター】 【exOPT_VLBNY1 収納バッグ】 【exOPT_VLBNY1 携行小型タンク】 【exOPT_VLBNY1 収納ポケット】 【exOPT_VLBNY1 リストガード】 【exOPT_VLBNY1 腰部ベルト】 【exSBT_VLBNY1 スラスター】 【exSBT_VLBNY1 ダブルスラスター】 『ハウリン』【胸甲・心守】 【腕甲・万武】 【脚甲・狗駆】 【頭甲・咆皇】 【exOPT_KT36D1 ドッグテイル】 【手甲・拳狼】 『マオチャオ』【争上衣「ツェンシャンイー」】 【衝袖「ヒューシウ」】 【天舞靴「ティアンウーシェ」】 【鉄耳装「ティエアールツァン」】 【exOPT_KT36C1 キャットテイル】 【裂拳甲「リークアンジア」】 『サイフォス』【鞘(コルヌ)】 【ソルダットアルミュール:胸・肩・腰・腕】 【キャヴァリエアルミュール:胸・肩・腰・腕】 【ブークリエアスィエ】 【チェヴァルボッテ:腿・脛】 『紅緒』【鞘(為虎添翼・怨徹骨髄)】 【茜之胸当及羽織・草摺・肩当】 【蘇芳之胴・草摺・肩当】 【餓鬼之面頬】 【蘇芳之袖】 【紅蓮之籠手】 【蘇芳之腿当】 【朱雀之臑当】 『ツガル』【exOPT_SRX03 ツインテール】 【ホーリィアーマージャケット】 【ホーリィバーニアスカート】 【exAM_SRX03腕部アーマー】 【exAM_SRX03脚部アーマー】 【レインディアアームドユニット・タイプγ】 【ホーリィブースターブーツ】 【レインディアバスター】 『ジルダリア』【ルートグリーヴ】 【フローラルリング】 【トランクチェストアーマー】 【バドヒップアーマー】 【セパルヴァンブレイス】 【リーフガントレット】 『ジュビジー』【ピスティルレッグパーツ】 【キュベレーアフェクション】(キュベレーの寵愛) 【カーネルプロテクト】 【シェルスカート】 【ケイリクスアッパーアームガード】 【カローラフォアアームガード】 【キュベレーアフェクションopt-α】 【キュベレーアフェクションopt-β】 【キュベレーアフェクションopt-γ】 『フォートブラッグ』【FB-RP3 ファイアリング・バックパック】 【FB-RP3s スタンド】 【FB-RP3c コンソールパネル】 【FB-RP3f フットペダル】 【FB-CPC 胸部プロテクター】 【FB-WP2 汎用プロテクター】 【FB-WP4 汎用プロテクター】 【FB-WP7 汎用プロテクター】 【FB-RP3b ピボット】 『エウクランテ』【イリス・マスクパーツ】 【アイオロス・リアウイング】 【カイキアス・ブレストパーツ】 【スキロン・ショルダーパーツ】 【アペリオテス・リアテイルパーツ】 【リプス・サイドテイルパーツ】 【ノトス・レッグパーツ】 【プレステイル】 『イーアネイラ』【ガラテイア・リアユニット】 【ペネロペイア・BCDユニット】 【アンピトリテ・ショルダーパーツ】 【テティス・テイルパーツ】 【EXopt_MM09MR フィンオプション】 【オケアノス】 『ヴァッフェドルフィン』【リアブースターSSv12】 【UWジャケット・タイプ・リュフトフェン】 【DR-274ショルダープロテクター】 【DR-752リストプロテクター】 【DR-228サイプロテクター】 【UWブーツ・タイプ・メーア】 【UWベルト・タイプ・タウチャー】 【DK-323opマスクオプション】 【リベット】 『共通装備』【exOPT 黒ぶちメガネ】 【reFLT 白き翼】 【reFLT 黒き翼】 【exOPT うさみみ・うさしっぽ】 【exOPT ねこみみ・ねこしっぽ(白)】 【exOPT ねこみみ・ねこしっぽ(黒)】 【モナーテ・LRSSゴーグル】 【exOPT リボン(ピンク)】 【ヴィーゼ・STHP・スカート(白)】 【ヴィーゼ・STHP・スカート(黒)】 【ヴィーゼ・STHP・スカート(赤)】 【exOPT マジカルハット】 【reFLT 悪魔の翼】 【exLEG レザーブーツ(黒)】 【exLEG レザーブーツ(赤)】 【exOPT ウェスタンハット】 【exLEG ウェスタンブーツ】 【エアリアルランドセル】 【メイドさんセット】 【たぬきさん仮装セット】 【ティアラ】 『フブキ』 【面隠し“闇狐”】 ○頭部パーツ 狐モチーフの面。センサーと補助演算装置が内蔵されており、装着した神姫の反応速度を引き上げる。 やはりフブキの純正装備は市販品ではなく、すべて戦績に応じて贈呈される特典アイテムである。オフィシャルライセンス取得の際に専用装備を買い揃える必要が無いという点で、フブキは入門用としては他の神姫よりも適しているといえる。 【忍装束“紫苑”】 ○胸部パーツ 軽量な素材で出来た上着。CSCアクセラレータ内臓で、神姫の反射行動を加速させる。 【忍草摺“紫蘭”】 ○胴体パーツ 新開発の反発重力システムが裏地に組み込まれたスカート。神姫の跳躍能力を向上させる。 【忍大袖“紫木蓮”】 ○肩部パーツ カラスのくちばしのような半そで。致命打となりうる肩口を保護する。 【忍篭手“紫式部”】 ○腕部パーツ 金属板が編みこまれた篭手で、刃物による斬撃も防ぐことができる。 【忍脚絆”紫鳳”】 ○脚部パーツ 脚部を換装して取り付ける。徹底した軽量化と増強筋力装置により敏捷性を大きく高め、爪状の足先で物に掴まることもできる。 『アーンヴァル』 【ランディングギアAT3】 ○脚部パーツ 飛行タイプの神姫が接地時に安定するためだけといったおもむきの脚部で、歩行には向かない。 バージョンによっては足底に補助スラスターがある。(フィギュアではくぼんでおり、ジオラマではただの脚部であることの解釈) スラスター付きの場合、それだけで軽装の神姫を恒常的に浮遊させることができる推力を持つ。 【リアウイングAAU7】 ○リアパーツ 基部補助翼、バインダー、推進器付き主翼で一セットのウイングパーツ。 推進器の推力は莫大で、重武装の神姫でもこれだけで一応の飛行が可能である。 各部品はばらして個別に運用できる。 【ヘッドセンサー・アネーロ】 ○頭部パーツ 装甲としては期待できないが、優秀なセンサー機能を満載。 【buAM_FL012 胸部アーマー】 ○胸部パーツ 神姫のCSCを守ることに特化した装甲材。 良好な被弾傾始を持つ。 【exSLD_FL012 ガードシールド】 ○装甲パーツ 主に簡易的な軽量盾として使用する。 つける部位によっては飛行時の補助翼となる。 【exAM_FL012 増設アーマー】 ○装甲パーツ 装甲部位が少ないアーンヴァルのための増加装甲。圧縮空気による小型補助スラスターを内蔵している。 ガードシールドではなくこちらを盾にする神姫も多い。 【エクステンドブースター】 ○機能補助パーツ 推進剤と大推力ロケットが一体となった、いわゆるSRB(固体ロケットブースター)。 離陸時及び巡航時の推力が大きく上昇する。 任意で投棄可能。また一度に複数器装着することもできる。 『ストラーフ』 【GA2“サバーカ”レッグパーツ】 ○脚部パーツ 脚部を丸ごと換装するタイプの巨大なレッグパーツ。 地上での機動力が大きく向上する。 立体的なフィールドでは壁を蹴るなどしてアクロバティックな動きも可能。 【GA4“チーグル”アームパーツ】 ○腕部パーツ 腕部を丸ごと換装するアームパーツ。 白兵戦闘能力が向上し、また大型の武装も扱い易くなる。 【DTリアユニットplus + GA4アーム】 ○リアパーツ 馬力のある専用ユニットでチーグルアームを駆動させる。 素体本来の腕が自由になり、別にアームを動かせるようになるが、四本に増えた腕を一度に運用させるにはある程度の慣れが必要。 【buAM_FL013 胸部アーマー】 ○胸部パーツ 中心部が丸見えなので、軽量ではあるが装甲としては疑問が残る。 側面からの不意打ちなどでCSCが破損するのを防ぐ意味合いが強い。 【exSLD_FL013 ガードシールド】 ○装甲パーツ 小さいが盾としては優秀な部類に入る。 先端で突くことも可能。 【exAM_FL013 01スパイクアーマー】 ○装甲パーツ 装甲として十分通用する性能。 大事な部分をピンポイントで守る。 付ける場所によっては武器にもなる。 【exAM_FL013 02スパイクアーマー】 ○装甲パーツ 01よりも幅広なので使い勝手が良い。 【exOPT_FL013 ツインテール】 ○機能補助パーツ 一見すると装飾パーツだが、実は重心の高くなったストラーフのバランサーとして用いることができる。 もちろん通常の神姫も同様の目的で装備可能。 『ヴァッフェバニー』 【WFブーツ・タイプ・クレイグ】 ○脚部パーツ 数多くの神姫が愛用するコンバットブーツ。 抗弾性能を保ちながら地上での機動力を上げられる。 【リアブースターJRv21】 ○リアパーツ 旧ドイツ軍の秘密兵器、ジェットパックをモデルにしたような装備。 ただしこれだけでは飛行不能で、他の推進器や補助パーツと一緒に運用する。 パーツ構成によって性能が激変する。 【KO-204スコープ】 ○機能補助パーツ 望遠や照準補助、赤外線スコープなど、視覚系のセンサーに特化したパーツ。 ヴァッフェバニー専用装備と思われがちだが、各部に取り付けることで単純に「目が増える」ことになるため、死角が少なくなり索敵機能がアップする。 【buAM_VLBNY1 胸部アーマー】 ○胸部パーツ 胸部を保護する抗弾プロテクター。ユーティリティーポケットも付いている。 が、性能面とは違う理由で一部の神姫たちに人気である。 【exAM_VLBNY1 腕部アーマー】 ○腕部パーツ 二の腕を保護するプロテクター。軽量なので使いやすい。 【exAM_VLBNY1 脚部アーマー】 ○脚部パーツ 大腿部を保護するプロテクター。胸部同様にこちらもユーティリティーポケット完備。 【exOPT_VLBNY1 増設ラジエーター】 ○機能補助パーツ 取り付けたパーツ(主に推進器系)の放熱を促し安定性を底上げする。地味だが重要なパーツ。 【exOPT_VLBNY1 収納バッグ】 ○機能補助パーツ 武装のマガジンやエネルギーパック、リペアキットなど、戦闘時の各種消耗品を入れておくバッグ。あると便利。 【exOPT_VLBNY1 携行小型タンク】 ○機能補助パーツ 推進剤の増槽やエネルギー兵器の増加パックなど、各種エネルギーを蓄えておけるタンク。 【exOPT_VLBNY1 収納ポケット】 ○機能補助パーツ 余った武装ハンガーなどに取り付けて携行能力を増やす。 この中に入れていたアイテムで生き延びた例も多い。 【exOPT_VLBNY1 リストガード】 ○手首パーツ 射撃時に手首を保護するパーツ。照準補正機能もある。装甲としては役に立たないので補助パーツ扱い。 【exOPT_VLBNY1 腰部ベルト】 ○胴体パーツ リアパーツの安定を助けるためのベルトパーツ、という触れ込みだが、付けなくても特に支障は無い。 【exSBT_VLBNY1 スラスター】 ○機能補助パーツ フレキシブルに可動する基部で推進方向を自由に変えられるスラスター。 ジャンプの補助になるくらいの出力。 【exSBT_VLBNY1 ダブルスラスター】 ○機能補助パーツ 基部にスラスターを二個取り付けたもの。取り付け方で用途を変えられる。 『ハウリン』 【胸甲・心守】 ○胸部パーツ 上半身全体を覆うバトルアーマー。 意外に軽い。 【腕甲・万武】 ○腕部パーツ 胸甲・心守と一緒に用いることで簡易的なパワードスーツになるアームガード。 素体の腕を取り外して装備する。 【脚甲・狗駆】 ○脚部パーツ 脚部の筋力を増強し、犬のように長距離をすばやく走れるようになるブーツ。 慣れないと走りにくい。 【頭甲・咆皇】 ○頭部パーツ その大きさから分かるように優秀なヘルメットである。 また犬の顔のような意匠はハッタリではなく、聴覚センサーと嗅覚センサーを増強する役割を持つ。 ハウリン専用装備。 【exOPT_KT36D1 ドッグテイル】 ○機能補助パーツ 走行時のバランサーとなる尻尾。 神姫の感情を表現する機能も持っており、犬と同じく嬉しいときは激しく振れ、怖がっているときはへたる。感情を出すのが苦手な神姫におすすめ。 【手甲・拳狼】 ○手首パーツ 腕甲・万武に取り付けるほか、素体の手と換装することもできる。 物を持つのは苦手。 『マオチャオ』 【争上衣「ツェンシャンイー」】 ○胸部パーツ 上半身を覆うバトルギア。 ハウリンのものと性能的に差は無い。 【衝袖「ヒューシウ」】 ○腕部パーツ 争上衣とセットで用いるパワードアーム。 装備方法もハウリンと同じく素体の腕を取り外すが、こちらは格闘性能を重視し可動域が広い。 【天舞靴「ティアンウーシェ」】 ○脚部パーツ 脚部の瞬発力を向上させ、短距離の高速回避やスラスター無しでの大ジャンプが可能になる。 【鉄耳装「ティエアールツァン」】 ○頭部パーツ 正面からの防御に特化したヘッドギア。 猫のように聴覚センサーを鋭敏化させる。 【exOPT_KT36C1 キャットテイル】 ○機能補助パーツ 基本的な機能はドッグテイルと同じ。 感情表現のパターンが猫のそれになっており、嬉しいときは尻尾を立て、不機嫌なときは振り、威嚇するときは毛が逆立つ。 【裂拳甲「リークアンジア」】 ○手首パーツ 大型のハンドパーツ。装着方法はハウリンと一緒。 単体でも格闘性能が優れているほか、一部の武器を持つことができる。 『サイフォス』 【鞘(コルヌ)】 ○機能補助パーツ コルヌの鞘。頑丈なので盾としても用いられる。 【ソルダットアルミュール:胸・肩・腰・腕】 ○装甲パーツ 機動性能を殺さないよう設計された軽装鎧。 軽装といえどその装甲性能は群を抜く。 【キャヴァリエアルミュール:胸・肩・腰・腕】 ○装甲パーツ 防御力を追求した重装鎧。 ほとんどの攻撃を受け止めることができるが、かなり重い。 【ブークリエアスィエ】 ○装甲パーツ 盾パーツ。サイフォスの装甲の中でもっとも強靭。 重さがネック。 【チェヴァルボッテ:腿・脛】 ○脚部パーツ 足を保護する装甲。 移動速度が低下するが、その防御力は折り紙つき。 『紅緒』 【鞘(為虎添翼・怨徹骨髄)】 ○機能補助パーツ 刀を収める鞘。特に機能は無い。 【茜之胸当及羽織・草摺・肩当】 ○装甲パーツ 陣羽織。動きやすさを追求している。 胸当てにはクナイが仕込まれている。 【蘇芳之胴・草摺・肩当】 ○装甲パーツ 上質の鋼板を織り込んだ鎧。 斬撃に大して絶大な防御力を誇るほか、衝撃にも強いため防弾機能も高い。 【餓鬼之面頬】 ○機能補助パーツ 顔を覆う面。 これといった機能は無いが、相手に対する心理的な効果があると言われている。 【蘇芳之袖】 ○装甲パーツ 増加装甲板。 使い勝手が良い。 【紅蓮之籠手】 ○腕部パーツ 左右で意匠の違う籠手。 左は盾の代わりになるほどの防御力を持つ。 【蘇芳之腿当】 ○脚部パーツ 大腿部を守る装甲。 バージョンによって布製のプロテクターか、金属製の鎧かと大きく違う。 【朱雀之臑当】 ○脚部パーツ 膝から下を守る装甲。 意外に走行性能の低下が少ない。 『ツガル』 【exOPT_SRX03 ツインテール】 ○機能補助パーツ ストラーフのそれと違いこちらは単なる装飾パーツである。 【ホーリィアーマージャケット】 ○胸部パーツ エネルギー兵器に対して強いアーマー。 中心部にベル状のスラスターがある。 【ホーリィバーニアスカート】 ○胴体パーツ スカート全体が推進装置になっている。 【exAM_SRX03腕部アーマー】 ○腕部パーツ 軽量の装甲パーツ。 武装ハンガーが設けられている。 【exAM_SRX03脚部アーマー】 ○脚部パーツ 正面の攻撃から大腿部を保護する装甲。 【レインディアアームドユニット・タイプγ】 ○リアパーツ 背部スラスター、エレクトロマグネティックランチャー、フォービドブレイドと、それらを取り付けるフレキシブルアームを持つバックユニットで構成された強力な電磁式武装システム。 もちろんそれぞれ単体で用いることができる。 【ホーリィブースターブーツ】 ○脚部パーツ スラスターの付いたブーツ。 足首部分にハンガーが二箇所設置されていて、拡張性が高い。 【レインディアバスター】 ○合体ユニット 全装備を合体させて形作られるビークルユニット。そりのように上に載り、高速で突撃する。 『ジルダリア』 【ルートグリーヴ】 ○脚部パーツ O脚に骨格整形された脚部。性能的には素体脚部と大差ないが、軽量で安定性が若干高い。 【フローラルリング】 ○リアパーツ ジルダリアの要ともいえるパーツ。基部の二つとリング部の八つ合計十個のジョイントは多彩な武装を可能とする。 デフォルトの機能はリング部を高出力コイルとした電磁浮遊推進システム。すべてのジョイントに付けられたフィンが安定翼と方向蛇を兼ね、低空をふわふわとホバリングする。 ハイパーモード発動時はすべてのフィンが成長して巨大化、各々がフレキシブルな大出力スラスターとなり、ごく短時間ながら飛行専門のアーンヴァルをはるかに凌駕する高速空中機動が可能となる。 【トランクチェストアーマー】 ○胸部パーツ 茎をモチーフにした胸から腹部までを覆う対衝撃パッド。 【バドヒップアーマー】 ○腰部パーツ つぼみをモチーフにしたパンツ。トランクチェストアーマーと同様に対衝撃機能がある。 【セパルヴァンブレイス】 ○上腕部パーツ 蕚片(がくへん)をモチーフにした上腕アーマー。 【リーフガントレット】 ○下腕部パーツ 葉をモチーフにしたガントレット。長く伸びた手甲が特長。この手甲で殴ったり突いたりすることもできる。 『ジュビジー』 【ピスティルレッグパーツ】 ○脚部パーツ めしべをモチーフにした脚部。素体脚部よりも強固で重量があり、ジュビジーの装備を難なく支える。 【キュベレーアフェクション】(キュベレーの寵愛) ○リアパーツ 古代ギリシア・ローマの大地母神キュベレーの名を冠した総合防御兵装システム。ジュビジーがハイパーモード時に身に纏う。 可動する基部、近接武装のノコギリがついた装甲、プレート状のシールド、さらに六つのニードルシールドからなり、さらにニードルシールドに開いた穴からエネルギーフィールドが発生、ごく短時間だけあらゆる攻撃を無効化する。 またキュベレーアフェクションには異なる状況に対応するためのオプションパーツがいくつかあり、後述する。 【カーネルプロテクト】 ○胸部パーツ 豆のさやを髣髴とさせる、胸から腹にかけてを覆う装甲。 【シェルスカート】 ○腰部パーツ 種の殻をモチーフにした装甲スカート。高い防御力を持ちながらフレキシブルに動くため、移動の邪魔にならない。 【ケイリクスアッパーアームガード】 ○上腕部パーツ 萼(がく)をモチーフにした上腕アーマー。 【カローラフォアアームガード】 ○下腕部パーツ 花冠をモチーフにした下腕アーマー。ジュビジー唯一の「花」の部分である。 【キュベレーアフェクションopt-α】 ○装甲パーツ 穀物のもみ殻をイメージさせる追加装甲。二枚で一セット。ハイパーモード時に防御力をさらに上げる目的で装着する。 単体であればハイパーモードでなくても装備可能。 【キュベレーアフェクションopt-β】 ○装甲パーツ 直角に曲がったシールドが二枚並んでいる追加装甲。 単体であればハイパーモードでなくても装備可能。 【キュベレーアフェクションopt-γ】 ○機能補助パーツ これだけは装甲ではなく一種のユーティリティーポケットである。 デフォルトとしての機能はキュベレーアフェクションの追加バッテリーで、ハイパーモードの発動時間を少しだけ延ばす。 もちろん単体であれば通常時でも装備できる。 『フォートブラッグ』 【FB-RP3 ファイアリング・バックパック】 ○リアパーツ フォートブラッグの武装の中心となるバックパック。これを中心に様々な武器や装備を取り付けてゆく。動力脚がついており、不整地を走破するほか1.2mm滑腔砲の精密砲撃時に素体をしっかりと支える。 【FB-RP3s スタンド】 ○機能補助パーツ 精密砲撃時に素体を支える第三の脚。油圧式サスペンションも兼ねており、砲撃の反動吸収を一手(一脚)に担う。 【FB-RP3c コンソールパネル】 ○機能補助パーツ 単体で照準機能の無い1.2mm滑腔砲に必要不可欠な装備。 かなり高性能な火器管制装置が組み込まれており、超長距離の砲撃はもちろんのこと、障害物越しや視界外の照準もできる優れもの。ただ高性能ゆえに安定した状態でないと真価を発揮できない。 【FB-RP3f フットペダル】 ○機能補助パーツ バックパックの動力脚を素体の脚部で動かすためのペダル。精密砲撃時の水平照準調整もこれで行う。 【FB-CPC 胸部プロテクター】 ○胸部パーツ 複合装甲製のプロテクター。対貫通性能が高い。 【FB-WP2 汎用プロテクター】 ○装甲パーツ 中型の装甲パーツ。複合装甲製。 【FB-WP4 汎用プロテクター】 ○装甲パーツ 小型の装甲パーツ。複合装甲製。 【FB-WP7 汎用プロテクター】 ○装甲パーツ 大型の装甲パーツ。複合装甲製。 【FB-RP3b ピボット】 ○脚部パーツ ファイアリング・バックパックの動力脚。 素体脚から換装することができ、その場合バックパック時のパワーは出ないが安定性と走破性は折り紙つき。 『エウクランテ』 【イリス・マスクパーツ】 ○頭部パーツ 基本的な索敵、照準機能を持ったヘッドギア。 特筆すべきは水中突入時で、レーダー、ソナーの探知波受信装置となり、水中のセンサリングを確保する。 【アイオロス・リアウイング】 ○リアパーツ エウクランテの象徴的装備。推力を強化するアーンヴァルのAAU7と違い、フレキシブルに駆動するウイングは低、高双方の速域における高い運動性能を叩き出す。 【カイキアス・ブレストパーツ】 ○胸部パーツ 主たる戦闘距離域を想定し、耐衝撃性、抗切断性を持った構造で作られている。 【スキロン・ショルダーパーツ】 ○装甲パーツ 独特の整流効果を持った装甲パーツ。 【アペリオテス・リアテイルパーツ】 ○腰部パーツ 腰部の拡張性を大きく向上させる副推進装置内臓のパーツ。 【リプス・サイドテイルパーツ】 ○機能補助パーツ 任意の方向に二次元駆動する補助スラスター。神姫の運動性を高める。 【ノトス・レッグパーツ】 ○脚部パーツ 水中での推進器となる圧搾水流推進器を内蔵したレッグパーツ。超低空における安定脚としても機能する。つま先にはセンサーがあり、装備した神姫の索敵能力を向上させる。 【プレステイル】 ○合体ユニット エウクランテのほぼ全ての装備、武装を合体させた、鳥型のサポートユニット。 『イーアネイラ』 【ガラテイア・リアユニット】 ○リアパーツ 水中での機動力、運動性能の向上に特化した、というよりは水中専用のスクリューユニット。そのためトルクをかなり高く設定してあり、空転させるとモーターが焼きつくので注意。 【ペネロペイア・BCDユニット】 ○胸部パーツ 軟質素材で整形されたバラストタンク。内部の水量を調節することで潜行深度を変える。 普段の生活でも付けさせたがるオーナーが後を絶たない。 【アンピトリテ・ショルダーパーツ】 ○装甲パーツ 水中での整流効果をもたらす装甲。ハードポイントがついており、この上にさらに武装を取り付けることが可能である。 【テティス・テイルパーツ】 ○脚部パーツ 両脚部を丸ごと換装するひれ状の駆動ユニット。水中機動の要となるイーアネイラの象徴的パーツである。 【EXopt_MM09MR フィンオプション】 ○機能補助パーツ 水中機動を補助するひれパーツ。オマケのようなものである。 【オケアノス】 ○合体ユニット イーアネイラの装備、武装をほぼ全て合体させて生まれる魚型のサポートユニット。ただしヒレが横なのでイルカに見える。 『ヴァッフェドルフィン』 【リアブースターSSv12】 ○リアパーツ バラストタンクと高出力バッテリー、長大な自立駆動カブルフィンユニットで構成された水中機動専門のリアパーツ。ヴァッフェドルフィンにはこれ以外にもイーアネイラに性能的に競合するパーツが多く見られる。 【UWジャケット・タイプ・リュフトフェン】 ○胸部パーツ 装甲を兼ねた強靭な金属素材で作られたバラストタンク。状況に応じて追加タンクと追加バッテリーを取り付けられる。 【DR-274ショルダープロテクター】 ○腕部パーツ 水の抵抗を軽減する鮫肌状の表地のプロテクター。 【DR-752リストプロテクター】 ○手首パーツ 機能としてはショルタープロテクターと同じ。 【DR-228サイプロテクター】 ○大腿パーツ 他のプロテクターに同じ。 【UWブーツ・タイプ・メーア】 ○脚部パーツ 泳ぐことに主眼を置いて作られたひれ付きのコンバットブーツ。 【UWベルト・タイプ・タウチャー】 ○機能補助パーツ ジャケットから提げられたタンクやバッテリーと、各種小物を固定しておくためのベルト。 【DK-323opマスクオプション】 ○機能補助パーツ 追加のひれパーツ。イーアネイラのフィンオプション同様オマケみたいなものである。 【リベット】 ○機能補助パーツ 使わないジョイントに取り付け、水の抵抗を和らげる。神姫自身は完全防水のため、防水処置のためのパーツではない。 『共通装備』 【exOPT 黒ぶちメガネ】 ○装飾パーツ 神姫サイズのメガネ。二つのサイズがある。 視覚を補正する機能は付いていない。 【reFLT 白き翼】 ○リアパーツ 本物のようにフレキシブルにしなる翼。 生物的な飛行、滑空ができる。 【reFLT 黒き翼】 ○リアパーツ 黒い羽の翼。白き翼と性能的に差は無い。 【exOPT うさみみ・うさしっぽ】 ○装飾パーツ うさぎを模した耳と尻尾。 聴覚が鋭敏になるわけもなく、本当にただの装飾品である。 【exOPT ねこみみ・ねこしっぽ(白)】 ○装飾パーツ 猫を模した耳と尻尾。 マオチャオのそれと違い増強センサーやバランサーなどの高級な機能は付いていない。 が、感情表現補助は本物の猫のよう。 【exOPT ねこみみ・ねこしっぽ(黒)】 ○装飾パーツ 白と同等のスペック。 【モナーテ・LRSSゴーグル】 ○機能補助パーツ 目を覆うゴーグル。ヴァッフェバニーのスコープとは別に、火器管制関連のインターフェイスが充実している。 【exOPT リボン(ピンク)】 ○装飾パーツ 後頭部や胸部、そのた各部位に取り付けられるリボン。 かわいさ三割増。 【ヴィーゼ・STHP・スカート(白)】 ○胴体パーツ 装甲版を繋ぎ合わせたスカートアーマー。汎用ジョイントがあるので実用性が高い。 【ヴィーゼ・STHP・スカート(黒)】 ○胴体パーツ 色が異なる以外は白と同一。 【ヴィーゼ・STHP・スカート(赤)】 ○胴体パーツ 赤のチェック模様が入ったカラーバリエーション。 【exOPT マジカルハット】 ○頭部パーツ 魔法が使えるような気になる帽子。大小サイズ違いあり。 防具扱いでないため単なるアクセサリだと思われているが・・・・・・。 【reFLT 悪魔の翼】 ○リアパーツ 白き翼、黒き翼と対をなす飛行用翼パーツ。 前者よりも鋭角的な動きになる。 【exLEG レザーブーツ(黒)】 ○脚部パーツ 合成皮製のハイヒールブーツ。 単なるアクセサリパーツなのだが、一部のオーナーに熱狂的に支持されている。 【exLEG レザーブーツ(赤)】 ○脚部パーツ レザーブーツのカラーバリエーション。黒よりもビビッドな雰囲気をかもし出す。 【exOPT ウェスタンハット】 ○頭部パーツ バッファローのレリーフが施された帽子。 本革製。 【exLEG ウェスタンブーツ】 ○脚部パーツ かかとの拍車までしっかり再現されたブーツ。しかし拍車がこの形では馬が怪我するのではなかろうか? 本革製。 【エアリアルランドセル】 ○リアパーツ 超小型熱核推進ロケットエンジンが二基内蔵されたランドセル。飛行能力を持たない神姫が推進力だけで突進できる。細かな旋回機能は付いていないので、突進するだけである。 【メイドさんセット】 ○衣装 カチューシャ、ハーフエプロン、スカート、ニーソックスで構成されるコスチューム。動きやすさを重視し胴部は開けてある。ニーソックスは白黒二色あり、好みでどうぞ。 【たぬきさん仮装セット】 ○衣装 まるみみ(茶)、しましまテイルで構成されるコスチューム。うさぎやねこよりも汎用が利き、どの神姫にも似合う。 【ティアラ】 ○頭部アクセサリ 金属細工職人が手間ひまかけて一品一品手作りした冠。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2639.html
「……うーん」 「またか、キミは。今度はなんなのだね?」 いけない。またアルバイト中に考えこんでしまった。でも、どうしようもない。 お客さんが来れば、身体が勝手に動いて仕事はできるけど、気付かないミスがあるかもしれないから、バイトに集中したいけどこればっかりは。 「そうそう。キミが、神姫のことをよく話すものだから、実は……私も武装神姫を買ってしまったのだよ!」 ババーンと後ろで効果音が出てきそうな風に君島さんが言う。 だが、しかし、 「……うーん」 いまだに僕は考え込んでいる。 話し声が聞こえて、視界には入るのだけど、君島さんの話が頭に全然入ってこない。ゆえに、反応できない僕。 「……ふ、悲しいな、悲しいよ。だが、これでも、無視はできるかな?」 君島さんがスゥッと右手を顔の前まで上げて、 「来い『リンレイ』!!」 「え、え、なんですか?」 パチンっと軽い音が店内に響く。 君島さんが親指と中指を合わせ、勢いよく弾いた。いわゆる、指パッチンなのだけど、なんで今ここで? 店員なんだから、目立つ行為は控えて――。 「――お呼びでござりますか、主殿?」 「うわっ!!」 びっくりした。な、なんだ、どっから来たんだ? カウンター上に突然、人形、武装神姫が現れた。 片膝をつき、頭を垂れている姿。……これは確か忍者型神姫の『フブキ』だ。 真っ黒の忍び装束に身を包み、口元を黒布で隠している。 「はっはっは、いい反応だ。仕込んできて正解だったな、リンレイ」 「はっはっは、そうでござりますな、主殿」 イェーイ、とリンレイという神姫が手の平で、君島さんが指で疑似ハイタッチをする。 「どういう仕掛けですか!?」 「まあ、落ち着きたまえ。まずは紹介しよう。ちょっと、武装神姫に興味が出てきてしまってな、この前買ってみたフブキ型のリンレイだ。忍者ならこんなのができて当たり前なのだよ」 「リンレイでござります。以後、お見知りおきを」 再び頭を垂れて、挨拶をするリンレイ。 僕は君島さんを訝しげに見る。 腕を組んでフフンとなんか自慢げだ。 (間違った方向に忍者っぽいな~) いや、神姫もそれぞれ。これも一つの神姫としての姿なのだろう。 はっきり言って普通ではない。……でも、こちらが言えた義理でもない。 これほど、変ではないけど。 「それでは、話を戻すことにしよう。今度はどうしたのだね?」 「どうやって来たのかまだ聞いて――……はぁ、別にもういいです……」 聞いてもしょうがない気がした。 手品みたいなものだろうと割り切ることにする。 「いつも話してますけど、僕の神姫のシオンがですね、なかなかバトルがうまくいかなくて」 「件のバトル恐怖症の神姫かね? 苦労しているのだな」 「武装神姫は普通、バトルはスポーツみたいに楽しめるよう設定されているのでござりますが、シオン殿という方は戦えないという。不可思議でござりますな」 「……そうだよ、ね」 誰に言っても、見せたとしても、そう言うんだよな。もう慣れたよ。 「……キミは、以前に私が言ったことを覚えているかね?」 「えっと、なんでしたっけ?」 「ほれ、『神姫には心がある』と言った事だ」 「ああ……」 神姫が空虚な機械みたいにプログラムだけで動いてたら、こんな風に悩む必要はない。感情があるから、笑ってくれたり、喜んでくれたり――逆にバトルができなくて苦しむ――する訳だから、必死にこんな悩んでいるんだ。 悩むか悩まないか……あれ、なんか堂々巡りだな。 「キミが思っている通り、現実的に、神姫のカテゴリは機械だ。データを元にして、オーナーがプログラムを神姫にインストールさせて様々なスキルを手に入れることもできる。言語機能や身体機能もデータは……まあ、あることはあるのでな。 しかしだ。それでも手に入らないものはあったりもするのだ……長倉君は世界クラスの神姫バトルは見たことはあるかね?」 「いいえ……ありませんけど……」 シオンが来るまで、武装神姫なんて友達のでしか見たことなかった。武装神姫のバトルを直接見たのも、あのゲームセンターでのが初めてだったし。一応、知識はあったぐらいのレベルだ。 「インターネットの動画サイトで探せば、そういう大会の動画などゴロゴロあるのだが、あれはリアルファイトの真剣勝負。神姫が物理的に機能停止。故障、なんていうトラブルも少なからずある。命がけの試合。失敗は許されない。そんな神経を使うバトルだ。……神姫も怖いと思うのだよ」 「……怖い……か」 その言葉を噛みしめる。それだと、シオンはバーチャルでもバトルを怖いということだ。表現できないほどに。腰を抜かして動けなくなるほどに。 「それでも、世界レベルの神姫は戦うことができる。それも人が知覚できない程の戦闘技術でだ。なんでだと思う?」 「……多分、自分のオーナーを信頼して一緒に戦っているからじゃないですか? よくは、まだ、わからないですけど……」 「ふむ、それも一つの答えでもある。神姫オーナーそれぞれに無数に正解はあるのだよ。わたしもキミも持っている。だが、私が、仮に、あえて言うなら人と同じ“成長する”ということかな」 「んん?……」 口を紡いでしまう僕。 君島さんはこういう焦れったい説明が好きならしい。 「つまりはだ、プロのスポーツ選手と同じだ。血の滲むような練習をして、強豪から勝利を勝ち取る。……そして勝てない神姫も成長して勝てるようになる」 「それは正論ですけど……うーん……」 数年の時間をかければ、いずれはバトルで勝てるようになると思う。だけど、そんなにかけられない。僕は――いや、僕たちは、宮本さんとイスカが目標なのだ。日本を離れる前に、なんとかしたい。悠長にしてられないよ。 「おやおや、長倉君は早急に答えが欲しいらしいな。それで、参っているようだね。しかたない、な。ここはいっそのこと私が手ほどきをしてみようか?」 「えっ!?」 この人、君島さんならなんかやってくれそうな予感が……だけど……。 「ふ、神姫オーナーになって日は浅いが、キミよりかは幾分、私は大人なのだぞ? 生き方をキミのような子どもたち、色々と抱えている神姫たちを導くことなど容易いのだよ」 「……君島さん」 この人なら、どうにかすることもできるのではないか? シオンを拾った時も君島さんのアドバイスで進展したんだ。だったら、君島さんに任してみるのもいいと思う。……そんな気がする。 「ただし、私のやり方はスパルタだぞ? ついて来れるかはキミたち次第だ」 「……はい、お願いします!」 君島さんの手を両手でガシッと握る。 シオンが普通になるまで、どんなことでもやってやる。そう意気込むと、僕はやる気で満ち満ちてきた。 ――よぅし、やってやるぞ! 「こちらのお弁当は温めしてよろしいでござりますか?」 「きゃー、忍者っぽいお人形が店員やってるー! かわいいー!」 いけない。アルバイトの最中だった。 しかし、優秀すぎるなリンレイは。 僕たちが話をしている間、一人でいつの間にか店番をやっていた。 ―――― 次の週末に、君島さんは僕たちがいつも行くゲームセンターで、『授業』をしてくれると約束してくれた。 それで、今日は、ちょっと用事ができてシオンとお出かけしている。 「本当に、これ、いらないの?」 「私は、あのクレイドルを使っていたいですし、別の人が使ってくれたほうがいいと思います」 僕が持つ紙袋にはクレイドルが一つ入っている。 キズのある方ではなく、宮本さんから預かった方にあった、もともとシオンの、あまり使われていない方のクレイドルだ。 前に使っていたのより、今は貰ったキズのあるこっちを使いたいらしい。 武装を本格的に譲り受ける決意をして、クレイドルの使い道がなかったから、これはどうしようかと考えていたら、 「アリエさんが言ってたんですけど、オーナーの霧静さんの伯父さんがショップを経営してるらしいですので、そこで、相談したらどうですか」と言ったのだ。 「あと……『ゲルリン☆ヂェリー』も、あれば欲しいのですけど」とも言った。 二人を強制シャットアウトさせたあの飲み物。シオンにとってクレイドルはついでで、どうやらそっちが本命らしい。 いや、まあ、シオンが自分から欲しがるのは別にいいんだよ。 ……いいんだけど、なんでよりによってアレを欲しがるんだよ。 目的地は霧静さんから聞いている。 僕が住んでいる町の駅から少し離れて、線路の向こう側、そこの商店街になっている地域だ。 夕方なので、買い物帰りであったりする主婦さんたちが多い。他には僕と同じ学生の人だったり、会社帰りのサラリーマンが見える。 霧静さんの伯父さんが経営してる神姫ショップがこの商店街の端の方にあるらしいのだ。 大型のチェーン店とかじゃなく、自営業でやっているらしい。 武装神姫は年々流行ってきているので、商売ならそういうのに乗り出すのも悪くはないのかもしれないなと思った。ただの素人の考えだけど。 「えーと……これか」 「これってなんて読むんですか?」 目的のお店についた。 見上げれば店の看板。「MMSショップ『Blacksmith』」と大きく書かれている。 店の前には大型ガラス内に武装パーツが展示されていて、向こう側の中の様子が少し見える。 「……ブラックスミス。大体は鍛冶屋とか鍛冶職人を意味してるね。ファンタジーの小説でも時々出てきたりするけど」 「ああ、そういえば」 ファンタジー色を強く感じる。エレメンティアなんて名称が付く武器を作るくらいだ。そういうのが好きなんだろうな、なんて一発でわかる。 そう思いながら僕は店のガラス戸を開ける。 「いらっしゃやせー!……ってあら? ケートん、シーちゃんじゃない」 「あ、アリエさん。こんばんわ」 店のカウンター、台上にはなぜか見覚えのある神姫、アリエがいた。 最近は神姫でも店番できるような設定になっているのか。 「……なに、その挨拶の仕方……」 「ゲンさんのマネだよー。……あ、ゲンさんっていうのは3軒隣の八百屋の源内さんね。言いやすいからからマネしてるんだー。いらっしゃやせー」 「まあ、アリエがいいなら、それでいいんじゃないかな。ちなみに、なんで店番してるの?」 「あの後、リミちんに店からヂェリカンをパクっ……拝借したのばれててさー。労働で返しなさいってさー。まったく、リミちんは真面目なんだからー」 「倒れてれば、そりゃばれるって」 嫌な事件だったよ。 シオンは会話にも入らずキョロキョロと店内を見渡している。 ああ、事件を引き起こしたアレを探してるみたいだ。 「『ゲルリン☆ヂェリー』ってどこにあるんですか?」 「えぇ!? あれは、そっちだよー。あははー」 さすがにアリエも、あれはもう勘弁したいらしい。 店内の奥の方を指差してながらも、目が泳いでいる。 「螢斗さん、見てきてもいいですか?」 「……いいと思うよ」 僕の肩に座っていたシオンを床に降り立たせる。 ちゃんと神姫だけでも選べられるように、神姫の目線で、棚の商品の一部が床の台に置かれている。 工夫されている店内だ。 それにMMSショップ・ブラックスミスは、品揃えが豊富そうである。 シオンがいる方は、パーツやら武装やらが綺麗に箱詰めだったり、袋詰めで置かれてたりする。ついでにヂェリカンも並んでいる。 反対方向、僕から見て右側は、武装神姫の、CSCのない素体がガラスのケースで見本に置かれているみたい。 大型店じゃないから神姫の種類はそんなにないみたいだけど。 でも『鍛冶屋』っていうくらいだから、もしかしたら武器に趣を置いているのかもな。 だからって、変なヂェリカンも置かないでほしいな……。 「あちゃー、シーちゃん。アレを気にいっちゃったか。ますます変な神姫だねー」「……アリエもね。それより、これを引き取ってほしくて、来たのだけど」 紙袋から真新しくもあるクレイドルを取り出す。それをアリエの前に置く。 「ふーん、クレイドルかー。こういうのは店長だねー。ちょっと待ってて……テンチョー!!」 アリエがカウンターから降り立って、奥の方に声を掛けながら消えていった。 霧静さんの伯父さんらしいけど、どんな人かな? 優しい人だといいな。 お、奥から大きそうな人影が、 「おう。おめぇさんかい! クレイドル引き取ってほしいってぇのは」 まず、シャツを腕捲りしていて、筋骨隆々の体格が目についた。 黒いエプロンをしていて、胸元に「Blacksmith」と白い文字でプリントされている でも、頬に切られたような傷があるのはどうしてなんだろうな~。 滅茶苦茶、怖いな~。 「ええ、そ、そうです。……でも、お金とかにしたい訳では、なくてですね、あの、その、いらなくなったから、別のオーナーさんに役立ててほしくて、ですね……」 「なんだとぉ!?」 「ひぇっ! あああ、あの……」 「偉ぇな!!」 間近、しかも怖い形相の顔で両肩を力強く掴まれる。正直言うと痛いのだけど、なにも言えない。 ……正直、すごく怖いです。 「そうかぁ!! いやー、クレイドルだけ欲しがる奴なんて、そこらじゅういやがるから、そういうのは正直ありがてぇ。それに、金はいらねぇってかい。今時の子にしては偉ぇ!!」 「テンチョー、ケートん、怯えてますよー。怖がらせないでくださいねー。一応、リミちんのお友達なんだからねー」 「おぉい!! それを早く言えよ!! 璃美香の友達ならサービスするぜ。ゆっくりしてくれぇや。だけど、璃美香はアリエ預けただけで、まだ学校だけどな。ガッハッハ!!」 バンバンと肩を叩かれる。ものすごく痛い。 2メートルはあろうかとおもわれる巨体、それでいて、声もものすごく大きい。 元、ヤのつく職業の人か? でもなんでこんな人が武装神姫のショップなんかやっているんだろうか。こんな人が神姫を愛でてるとか……ありえないです。 「はいはい、ちゃんと傷とかは隠してねー。初めてのお客さんは大抵テンチョー見ると怯えて逃げちゃうんだからさー。……はいこれ、絆創膏っすよー」 「お! すまねぇな」 慣れた手つきで、引き出しから絆創膏を取り出すアリエ。 それを受け取って店長さんは自分の頬に貼る。 なんとか傷は絆創膏で隠れてくれたけど、脳裏から離れない。 「あはは、怖かったっしょー。でも、この傷はただ単に事故ってできたのだから心配しないでー。図体の割に、この人ただのゲーオタだから。極道関係者とかでもないよー」 「……ああ、そうなんだ」 ゲーム好きなカタギか。なんだ、よかった。胸を撫で下ろす気分だ。本当によかった。 「ゲーオタは余計でい!!……あっちにいるのがボウズの神姫かい?」 親指でシオンを指差す。 三つぐらいヂェリカンを持って来るシオンの姿が。……おいおい。 「そうです……シオン、そんなに買うの?」 「螢斗さん、いいですか?」 「――うん、いいよ」 上目遣いで言われたら拒否できない僕がいる。例え間違った買い物でも即答してしまう。 「おお!! それを欲しやがる神姫がいるとは。おめえさん気に入ったぜ」 「テンチョー。あんな危険物置くの止めましょうよー」 「そりゃ、できんぜ」 「なんでですかー?」 「武器は好きだ!! が、ヂェリカンも好きだ!! いずれは全国、果ては全世界のヂェリカン・シリーズを網羅して店内に置くのがオレの夢なんだぜ!!」 「武装を念頭に置いてくださいよー、武装を」 アリエがツッコミに専念している。それがなんか珍しい。 「ふん、とりあえず、ボウズはこのクレイドルを善意で金もなしに売りたいってわけかい?」 「まあ、はい」 「そっかい、そっかい。……ちょっと待ってろい」 言うと店長さんは奥に行って、すぐ戻ってきた。 「――礼に、コイツをやんぜ」 「いいんですか?」 「こちらも商売なんでな。等価交換ってやつさぁ」 カウンターにコロンと何かを置いた。両手にそれぞれ持つような、二つのナックル状の武器。 「ありがとうございます。……でも、これって」 神姫用の武器だろうけど。えっと、どこかで見たことあるような……? 「ボウズの神姫、アーティル型なんだろ。こいつはアーティルのアレだ、アレ。……なんだっけっか?」 「テンチョー、これは『ぺネトレートクロー』っすよ……形状がどことなく違いますけどねー」 「そうだった、そうだった。突然アイデアが降ってきてな、こいつは俺が暇で作った公式風味のオリジナル武装『ぺネトレートクロー・烈』だぜ。最新作だ。俺は暇つぶしでも、本気を尽くす男だからな。ガっハッハ!!」 「だったら、こういうオリジナル武装、いっぱい作ってひと儲けしましょうよー」 「ソイツはもう正式な申請とっといたが、いちいち神姫会社に申請するのが、時間が掛かるし……なにより面倒だぜ!!」 「もう、永久閉店しちまえー」 とりあえず、変なやり取りが展開されているが横に置いておく。 そうか、これって。アーティル型装備の一つか。 いずれは揃えようかなと思っていたけど、こんなところで手に入るなんて。 それも特別製らしい。 「……どんな感じ?」 「何か、しっくりくる気がします。すごく、使いやすそうなんですけど……でも、バトルで、私なんかがちゃんと使いこなせるかどうか、心配です」 手に持って、ブンブンっと素振りをしている。 シオンは武装だけが立派になるのを引け目に感じているみたい。 「大丈夫、大丈夫。次、やる時は秘密兵器の先生が来てくれるから。その人ならなんとかしてくれる……はず」 「……できるでしょうか」 期待はしているんだよ……しているんだけど不安。 そんな感情に雁字搦めになっていく僕。 成せばなるのか……なぁ。 「なんども言うっすけどねー。店の名前『ブラックスミス』なんだからさー、ヂェリカンはいらないでしょー」 「バカたれぇ!! RPGには、回復アイテムが必要だろうが。神姫ショップに武器屋も道具屋もないだろうからなぁ!!」 「ここはリアルっすよ。ゲーム内じゃないです。それに私は、そのアイテムで死にかけたんですけどねー。このゲームオタク店長めー。毒物は店に置いちゃいけないでしょー!」 「好きになった神姫が目の前にいるだろうが!! ゆえに毒物じゃねぇ。俺は置き続けるぜ!!」 「もう、店畳んじまえー」 呆れる神姫店員アリエと、巨体&大声の店長さんがどっちも止まる様子がない。 とりあえず、一番に声がでかすぎる。 会話がうるさくて、近所迷惑になりそうだから、帰る前に止めていかないとな。 不本意だけど、このヂェリカンの会計もしたいし。 ……これからブラックスミスは行きつけのお店になりそうだなーと思った。 店長が怖いけど、悪い人ではない。 「ぐだぐだうっせぇ神姫だぜ。スクラップにしてやろうか!? あぁん!!」 「へぇー、そんなこと言うんだー。それしたら、リミちん一生テンチョーに口利かなくなりますよー。それでもいいんですか、チクりますよー?」 「すまん!!!!」 アリエに潔く土下座する店長さん。 うん、いい人だ。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2705.html
「どう? 仁さん」 とある建物のとある一室。華凛はパソコンを横から覗きながら言った。パソコンを操作している青年は眼鏡を直しながら呟く。 「思った通り、改造神姫ですね。それも、重度の」 青年はそれだけ言って、再びキーボードを打ち始める。 私は、クレイドルで眠る神姫を見た。武装は全て外され、静かに眼を瞑っている。その安らかな寝顔を見ていると、さっきまでこちらに銃口を向けてきたとは思えない。 「店長、こっちの武器も違法改造が施されてます」 そう言って改造神姫の武器の入ったダンボールを抱えて現れたのは、別の神姫だった。たしか、アーンヴァルMk.2型。 「そうですか。ご苦労様です、エリーゼ」 「いえ、そこまでのことは……」 「いえいえ、いつも助かってます」 「もう、店長ってば大袈裟ですよ~」 エリーゼと呼ばれた神姫と青年は、仲良さげに会話している。とても微笑ましい。 することのない私は、椅子に座ってここに来た経緯を思い出した。 「止まった? 壊れた? どっちでもいいけど」 「エネルギー不足だって」 神姫が止まってしばらく経ち、私達は神姫を調べた。虚ろに開かれた瞳は、何も映さない。口は半開きで、まったく動かない。刑事ドラマで出てくる死体と似たような感じだ。 頬を伝う涙が、妙になまなましい。 「って、華凛。何してるの?」 見れば華凛は携帯を取りだし、どこかへ電話しようとしていた。 「う~ん、ちょっと待ってて」 携帯を耳に当てる華凛。まさか、警察にでも連絡しているのだろうか? 「あ、仁さん? あたしよ。うん、ちょっと興味深い物を見つけてね?」 違うようだ。警察相手にこんなにフレンドリーに会話出来る人はいないだろう。いや、いるかもしれないが、それは華凛ではないはずだ。 「ううん、こっちから行くからいいわ。うん、それじゃ」 ピッと通話を切った華凛は、神姫を手に取る。 「樹羽、もう少し付き合ってもらえる?」 「どうするの?」 華凛は神姫をちらつかせるように振る。 「調べるのよ。この神姫を」 そして来たのが、このホビーショップな訳だ。華凛が話していた、知り合いが経営している店とはここの事らしい。 店長である柏木仁(かしわぎじん)さんは、若いながらも相当なエンジニアであるらしく、今もあの神姫を全力で調べてくれている。 その助手でもある神姫、アーンヴァルMk,2型のエリーゼは、オーナーである柏木さんのことをとてもよく慕っている。 (神姫は小さな人、か……) まったくもってその通りだと思う。人と同じように笑う神姫。人と一緒に笑う神姫。しかし、あのエウクランテ型の神姫は、はたしてそうだったのだろうか? 昔は、あのエリーゼのように笑っていたのだろうか? 最後に見せた涙は、彼女の本当の意識なのだろうか? さっき柏木さんに聞いたが、あの神姫は重度の改造で暴走してしまっていたらしい。誰がそんなことをしたのか、まではわからなかったが。 「こんなこと、絶対おかしいよ」 「ぎりぎりセーフね、今のセリフ」 パソコンを見るのに飽きたのか、華凛はこっちに近付いてきた。 「別に飽きた訳じゃないわ。樹羽が暇そうにしてるから来たの」 「そう……」 華凛は私と反対側の椅子に座る。 「樹羽、大丈夫? 肩とか」 「肩?」 ああ、そういえば被弾していたんだっけ? 肩口を見てみる。軽く痣が出来ているが、重傷じゃない。 「大丈夫、痛くない」 「そう、ならいいの。それじゃあ、あとはあの神姫のことね」 華凛がクレイドルに眼を向ける。そこには相変わらず神姫が眠っていた。 「ホント、さっきまであれに撃たれそうになったなんて思えないわ」 私は被弾しているが。 「ねぇ、樹羽。実はね……」 華凛が何か言おうとした時、柏木さんが大声をあげた。 「よし! プロテクト解除成功です!」 「……ごめん、樹羽。また後で」 華凛は柏木さんの元へ戻っていく。私も同行した。 「なんのプロテクトですか?」 「この子の記憶ファイルのだよ。悪いとは思ったんだが、犯人特定のために仕方なくね」 「記憶ファイル……」 パソコンの画面を見ると、いくつかファイルがあった。それぞれ日付がふってある。 「ん?」 よく見てみると、昨日と一昨日の分がない。それどころか、3日前のファイル以外、全て×印がついている。どうやら破損しているようだ。 「とりあえず、この3日前のファイルを開いてみよう」 柏木さんがマウスを動かし、ファイルをクリックする。神姫にもよるが、数日の記憶ぐらいなら、映像で保管されているという。 ファイルが開かれ、ムービーが再生される。 暗い部屋の中だ。デスクの上のパソコンのディスプレイしか光源のない小さな部屋。神姫の前には、男の姿があった。顔は写っていない。 『駄目ですよ! そんなこと!』 『うるさいっ! マスターに指図するな!』 突然の怒鳴り声。さらに、視界が目まぐるしく回転し、衝撃とともに止まる。多分、デスクの上から落とされたのだろう。 『もう俺には後がないんだ! もうこれしか方法がないんだよ!!』 『だ、だからって、改造は違法行為です! そんなの、間違ってます! 目を醒まして下さいマスター!』 『黙れぇっ!!』 何かを蹴る音とともに、視界が暗転する。 『もういい、お前は徹底的に改造してやる! そしてもう二度と俺に指図出来なくさせてやる!』 声が近付いてくる。うっすらと開かれる視界。大きな人の足が写る。視界は急に浮上し、天井が写る。多分、今は移動中。 『絶対に見返してやるんだ……あいつらを……俺は……』 マスターらしき男の呟きを最後に、神姫の意識が途絶えた。 「…………」 ムービーもそこまでで終った。辺りには重たい空気が流れる。 「酷い……」 思わず呟いた。会話からして多分、神姫バトルで一向に勝てないさっきの男が、最終手段で改造に走った。 そして改造した結果、神姫は暴走。逃げ出されたのだろう。 「……この記憶は、消してしまった方がいいのかもしれません。この子のためにも」 柏木さんがパソコンを操作する。 「待って、仁さん」 華凛がそれを制止する。あたかもその行動を予測していたかのような速さだ。 「ちょっとそれは待って。それより、それ以外の箇所クリーニングできる? 改造された部分と、マスター登録も含めて」 華凛が質問する。その表情は、いつになく真剣だ。仁さんは怪訝そうな顔をしたが、一応頷く。 「人格が破損している場合、厳しいですが……多分、なんとかなると思いますよ」 「そう、よかった」 華凛は私の方に向き直る。いつもと違う雰囲気に、私は少し戸惑った。 「樹羽、さっき言いかけたこと、言うね?」 「う、うん」 華凛は目を瞑り、しばらくしてから、開けた。 「この子の、新しいマスターになってくれないかな?」 「えっ?」 それは、頭の片隅で予想していた質問だった。願ってもない質問。しかし、私は気が動転していた。 「べ、別に私じゃなくてもいいはず。華凛がマスターになればいいし、それに私、引きこもりだよ」 それに、何故記憶を消さないのかが気になる。 「あ~、それは重要だけど、あたしからは言えないわ」 「……?」 ますますわからなくなった。記憶を消すなと言っておいて、理由は言えない?私が考えている間に華凛は私の肩に手を置く。 その目には、強い覚悟が見て取れた。 「ねぇ樹羽、今の状態がいつまでも続くとは思ってないでしょ?」 「…………」 今の状態――。 高校にも通わず、ただ家にいるだけの日々。引きこもりとしての人生。 徐々に言葉のピースが埋まっていく。 つまり、そういうことか。 この神姫には、新しいマスターが必要で。 私は華凛以外の繋がりが必要で。 二人の条件が重なる。 「樹羽」 そう。私だって、今の状態をよしとしている訳じゃない。どこかで変えなければと思っていた。 ただ、取っ掛かりが見えなかっただけで。きっかけがなかっただけで――。 「……わかった」 変わるタイミングは、今しかない。 「私、マスターになる」 こうして私、奏萩樹羽(かなはぎみきは)は、神姫のマスターとなった。 第二話の1へ その夜の話 トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1318.html
第六話「風間の神姫」 突然だが、ウチの学校がMMS解禁となった。 「何故だあぁぁぁぁあぁぁあ!!!?!?」 本編はまだ始まってない、今説明してやるから黙れ、矢瀬。 矢瀬が以前生徒会をたぶらかして校内MMS禁止にした事は、前に説明したハズだ。 しかし、無茶もいいとこで、生徒間での不満を通り越し、教員を含めた全校がキレかけていた。 そこで立ち上がったのは、隠れ神姫愛好会の会長であるレンだった。 MMS解禁を希望する署名を集め、全校生徒232人の内、220人から署名を集め(残り12人は矢瀬とアンチ、生徒会だ) 教員からも石頭の教頭を除き、全員から署名してもらった。 提出時に神姫愛好家の校長先生にもついて来てもらい、生徒会のマヌケ面が拝めたぜ。 全校の98%以上を敵に回し、流石に生徒会も解禁せざろうえなかった訳だ。 とゆう事だ矢瀬、諦めろ。 「ぬぉぉぉぉぉぉっ!!覚えてろ!」 とゆう事で、本編は解禁の翌日から始まる。 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ 午前9時7分 「よう相棒、元気か?」 「おはよう、ラリー」 現在授業中につき、神姫たちは空教室で井戸端会議である。 形人は国語、聖憐は英語の授業中である。 「それにしては、いっぱいいるなぁ…」 何しろ神姫を複数所持する生徒や教師もおり、一年だけでも80体以上居るのだ。 普通の教室一つの半分が埋め尽くされていた なお、二年・三年はそれぞれ別の場所に集まっている。 「そりゃ皆神姫が好きだからよ」 さっき知り合ったツガルタイプの神姫「ミシカ」が言う。 彼女のマスターは形人のクラスの担任で、通称がミシカ先生である。 「そりゃ…そうですよね(笑)」 「そう言えば、風間くんの神姫(こ)…来てないわね…」 「え?風間さんって神姫持ってたんですか?」 「そうよ、家庭訪問の時に会ったの、確か…マオチャオタイプだったかしら」 「猫…トムキャット?」 夏夜の外のラリーが関係ないものを連想した、視点を向けない事にしよう。 ラリー、出番終わり「ああ!ジャン・ルイ…もとい出番がやられた」 お昼休み 「…とゆう訳なの」 「ふぅん。…風間、どうなんだ?」 「…うーん、確かに神姫を持ってるけど…」 「けど、どうした?」 「今、目が見えないんだよ、神姫センターに連れてって直してもらわなきゃならないくらいに」 「どうして?」 「バトルロンドの最中に頭を強打されたのが原因らしいんだ」 「…それ何てサキ司令だ?」 「?」 「それより、家に置いて来てるのか?」 「いや、帰り道によってこうかと思って鞄の中に…ああっ!いない!?」 「「な、なんだってーー!!(AA略)」」 午後1時21分、三階廊下上空。 「出番は待ってればまわってくるもんだな」 ラリーが呟いた。 「そんな事言ってないで西棟をお願い」 「ラジャー(了解)、ブレイク(散開)!」 西棟三階、テラス。 現在は柵の老朽化が原因で封鎖されている。 「む?」 ラリーの視線の先には小鳥が居た。 「怪我をしているのか」 その小鳥は羽に傷を負っており、フェンスの前でうずくまっていた。 「ん?…これは」 傷を見ると、切り傷…しかも研爪「ヤンチャオ」によるもの…? 「近くに…いるのか?」 前が見えない。 これほど恐ろしいものは少ないだろう。 しかも、聴覚にも異常が発生したらしく、音がよく聞こえない。 少女は、底知れぬ恐怖な囚われていた。 戦闘用レーダーが近づく物体を捕らえた。 敵か味方かわからない 「k……が……iかiい…」 何かを言っているようだった。 だが、身体は考える前に、本能的に逃げる事を実行していた。 その直後、身体が宙に舞った気がした。 「~~っ!?」 「こぅの!馬鹿っ!?」 自ら身を投げたマオチャオに、ラリーは絶叫した。 推力全開、アフターバーナーON。ラリーの意志は瞬時に「リアウイングAAU7・C」に伝わった。 青白い炎を吹き、ラリーの身体が宙に浮かぶと同時に前方に加速する。 「(間に合え…!)」 猫をモチーフに作られているマオチャオだが、別段着地が上手い訳ではない。 更に視覚が無い、着地なんて望めない。 14cm程度の神姫にとって人間の1mは10m以上となる。 ましては三階、しかも地面はアスファルトである、激突すれば助からない。 全速で落下するマオチャオに追いつくラリー。その小柄な体をしっかり抱きしめた。 後は上昇するだけ。ラリーは上昇を始めようとした。 その直後、ブースター内の燃料が無くなった。 アフターバーナーは通常より高い推力を出すことが出来るが、燃料消費量も多くなる。 さっきから捜索のため飛び続けたため、燃料をかなり消費していたのだ。 落ちる! そう思った瞬間、何かに受け止められた。 「ヒカル!」 「ふぅ…間一髪」 溜息をつきながら一言 「よお相棒、まだ生きてるか?」 普段ラリーが言う台詞をそっくり言った。 後日談 マオチャオは小鳥の前に居た。 羽には包帯が巻かれている。以前、彼女がつけてしまった傷だった。 「ごめんなさい…あたし、怖くてつい…」 目に涙を湛え、小鳥を抱きしめる。 小鳥は、懺悔するマオチャオを赦すかの如く、静かに鳴いた。 「…これで一件落着、ね」 「まあ、元々悪気があった訳じゃないし」 ミシカの言葉に続けてラリーが言う。 「私としては、ちょっと不満」「「!?」」 「翼が壊れた…(泣)」 3人分の重量だ、それくらいの洒落は覚悟しろ。 終われ 次回予告 おのれ…神姫愛好会め… よろしい、ならば勝負だ! 次回「燃えるバトルロンド」 形人「…で、勝負に何を使うかわかってるよな?」 うがっ!?(N:矢瀬) 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ